大谷翔平が監督室で返した「無言」の覚悟。日ハム・栗山監督が批判をバネに貫いた「二刀流」
『「最高のチーム」の作り方』を上梓した栗山英樹監督の哲学を読む
実現不可能かと思われたミッションを見事にやってのけたファイターズ。その指揮官・栗山英樹は、どうマネジメントをし、どんな戦略を実践してきたのか。21日に出される栗山英樹の新刊『「最高のチーム」の作り方』から独占配信する。
■「頂きから見えた景色が想像とは違った」
2連敗からスタートした日本シリーズだったが、北海道のファンの皆さんの熱い声援に後押しされ、札幌ドームでは3連勝。3勝2敗といよいよ日本一に王手をかけて、再び広島に戻ってくることができた。
広島では、朝、ホテルから広島城までランニングするのが日課だった。すれ違う人は僕に気付くと、「頑張れよ」と気軽に声をかけてくれた。みんな本当に試合を楽しみにしてくれている、野球を愛してくれているということが伝わってきて、心からうれしい気持ちになった。
第6戦の試合前、チームのリーダー的存在である宮西尚生がやってきて、「声出しをやってください」と言ってきた。
ベンチ前で円陣を組んで、選手たちにはこう伝えた。
「オレもここからははじめてだ。日本一になってみなければ見えない景色があるはずだから、みんなでその頂きに行ってみよう。そこから何が見えるのか、みんなで行って見てみよう。今日、絶対に行くぞ!」
そして、ファイターズは日本一になった。
胴上げをしてもらって、優勝監督インタビューに上がったとき、もしかしたら僕がどこか冷めているように感じられた方もいらっしゃったかもしれない。
それは、そこから見えた景色が、想像していたものとはあまりにもかけ離れていたからだ。
見えたものは頂きからの絶景などではなく、野球で勝つために必要なもの、いまのチーム足りないもの、そういった山積した課題ばかりだった。 そこで、ハッとさせられた。
「だから、日本一を経験すると強くなれるのか」と。
選手として7年、取材者として21年、監督として5年、いろいろな角度から野球を見てきて、日本一を経験したチームと、経験していないチームには、見えない大きな隔たりがあることを感じていた。その隔たりの正体はなんなのか、それが日本一になってみて、はっきりとわかった気がする。過去、常勝軍団と呼ばれたチームは、そこで見えた課題をひとつひとつクリアしていくことによって、確固たるものを築き上げていったに違いない。
頂きに立ってはじめて得た気付きだった。