※『日本人が知っておくべき「日本国憲法」の話』KAZUYA/著(KKベストセラーズ)より一部抜粋
護憲派も、改憲派も、憲法と言ったら「9条」の話ばかり・・・
日本人が知っておくべき「日本国憲法」の話 第3回
憲法の問題は話題になっては下火になり、また話題になっては下火になりを繰り返してきました。かつては大臣が憲法改正を口にすると首が飛ぶような時代もありましたが、その時代に比べると改正についても言及しやすい時代にはなっています。
現時点で、日本は安倍晋三氏が内閣総理大臣ですが、安倍総理は長らく憲法改正への意欲を見せています。さらに与党で憲法改正要件を満たす衆参3分の2を占めているため、余計に注目が集まっていますから、ことあるごとに憲法改正というのもマスコミがピックアップするような環境にあるのです。日本国憲法は一度も一字一句も改正されていませんから、憲法改正自体が初めてになります。
憲法改正の機運が高まる中で様々な意見が出ており、その中で現状だと「護憲派」「改憲派」として括られることが多いでしょう。
しかし護憲派も改憲派も結局は、「戦争放棄」と「戦力不保持」を謳った“9条”の問題に多くの時間が割かれています。
日本国憲法の憲法制定時と比べて現代は安全保障環境が変化しています。それだけでなく、あらゆる状況が変わってきているのです。
「あらゆる状況が70年前と比べて変わっている」と言っても、護憲派からは「世界に誇る憲法9条を変えたら戦争になってしまう!」「侵略国家の日本が憲法を変えてしまったら世界で孤立してしまう!」「改憲して自衛隊を軍隊にするなんてもってのほか! 災害支援に特化した部隊にするべき」「安倍政権での改憲はダメだ!」など、安全保障を無視した非現実的な意見も聞こえてきます。
一方、改憲派からは「世界情勢が変化しているんだし、現状のままで日本の安全は守れない! だからこそ9条改正だ」「日本国憲法には緊急事態条項がない! これでは幅広い有事に対応できないじゃないか!」「日本国憲法の改正要件(96条)は厳しすぎる。だからここから改憲だ!」など、手を替え品を替え、なんとか改憲の方向へ導こうとする言論が聞こえてきます。
様々な意見を見ていると、確かに憲法について議論されているような気がします。しかし考えてみると、日本国憲法の条文をどうするかという話が主になっていることに気づくでしょう。条文といっても、基本的に話題に上がるのは9条の話ばかりです。
さらに9条をめぐる改憲派と護憲派のイデオロギーのようなものが前面に出ており、まともな憲法議論とは言えない状況だと個人的には感じています。
改憲派も護憲派も、9条以外のことにも注目すべきでしょう。
そしてさらに言うと、条文はもちろん大事なのですが、条文だけで憲法を語ることはできません。それではスケールが小さすぎるのです。