日本人の正月参拝の起源
初詣列車で開運旅
正月のメインイベントといえば、やはりなんといっても初詣。近所の社寺もよいが、たまには新年の幕開けに、正月限定の列車の旅を楽しむのも一興だ。アクティブな初詣&初旅で、幸先の良い一年を祈念しよう。
鉄道ファンならずとも
一度は乗ってみたい初詣列車
各地で運転されている、お正月にしか乗れない初詣列車。
「新年のイベント列車、とひとくちに言っても、そのバリエーションは実に多彩です。団体貸し切りの御座敷列車をイメージする方もいらっしゃるかもしれませんが、最近は個人で申し込みもできますし、車両も、サロンカーのような仕立てになっていたり、寝台車で移動しながらご来光を見られる『初日の出見物列車』などもあります」と語るのは、鉄歴60余年の旅行作家&鉄道ライター・野田隆さん。
今回は、数ある初詣列車の中から、特にお気に入りのユニークな列車をご紹介していただいた。
「友達と誘い合わせて行くのもいいですが、定年後の熟年夫婦にも、ぜひお勧めしたい。こういうイベント列車は新幹線と違って、流れる時間も、車窓から見える景色もゆったり。車のように渋滞に巻き込まれることもないですしね。初詣列車に乗って、夫婦円満を祈念するのもいいものですよ」。
全国 ユニーク初詣列車5選
津和野稲成号
JR山口線(新山口⇐⇒津和野)
正月恒例となっているJR山口線の『SL津和野稲成号』。普段レトロテイスト溢れる客車「やまぐち号」を牽引しているSLが、1月1日〜3日の3日間『賀正』のヘッドマークを掲げて、新山口駅から津和野駅間を走る。
「明治大正風のレトロな車内は落ち着いた雰囲気ですし、展望デッキもあります。山をふたつ越えて盆地を走るのですが、車窓からの景色は情緒たっぷり。汽笛の音、石炭の匂いも、SLならではの醍醐味です。快速電車なので、特急料金は必要なく、乗車券の他は、指定席料金だけなので、お得感もあります。途中、新山口駅内などで売られている『SL弁当』はボリュームも満点、津和野に着いたら、人気の駅弁『かしわめし弁当』もお勧めですよ」。
新春初詣やまどり
JR高崎線、JR武蔵野線等(高崎⇐⇒高尾)
高崎〜高尾間を乗換なしで往復できる、高尾山への初詣に便利な6両編成の直通列車。もともとは御座敷列車だったのを改良したもので、2列+1列の広々とした座席や、キッズスペースなどもあり、のんびりくつろげる内装だ。
「運行時間はおよそ2時間30分。グリーン車並みの広いシートを装備した全車指定席で、前後に展望スペースもあります。高崎線を大宮まで走った後、武蔵野線に入るのですが、普段は見られない景色が楽しめるのも魅力ですね」。
高崎7時45分発、停車駅は高崎、本庄、深谷、熊谷、鴻巣、北本、桶川、上尾、大宮、立川、八王子。高尾着は10時7分、復路は高尾16時21分発なので、参詣を終えてから麓の茶屋で名物のとろろ蕎麦などもゆっくり味わえる。
高野山ケーブル
鋼索線(極楽橋⇐⇒高野山)
標高約900mに位置する高野山ケーブルの『高野山駅』は、四季を通じて全国各地から参拝客が訪れる世界遺産『高野山』の玄関口。
また高野山駅そのものが、国の登録有形文化財にも指定されている。
「南海高野線の極楽橋駅が、高野山駅行きのケーブルカー乗り換え駅となっていますが、電車を降りたら、連絡橋を渡ってケーブルカーのホームへ向かえばOK。改札口を出入りする必要はありません。ただ、南海高野線なんば駅から、極楽橋駅まで直行してもよいのですが、時間が許すなら、間の橋本駅で乗り換え、観光列車『天空』で極楽橋駅を目指すのも一手。景色がよくて、おすすめですよ」*『『天空』の乗車には事前に電話予約が必要。
風っこストーブ日光初詣号
JR日光線(宇都宮⇐⇒日光)
JRの冬の人気列車『風っこストーブ号』が、宇都宮〜日光まで走る臨時快速列車。ぽかぽか、ぬくぬくと暖かい車内が、なんとも心地良い。
「『風っこ』は、JR東日本が2000年から保有している鉄道車両で、もともと吹きさらしのトロッコ列車だったのですが、いろいろ改良を加えて、今は東北各地のイベントなどで使われています。冬期は寒いので窓にガラスをはめ込み、2両編成のうちの1両では、昔懐かしいだるまストーブに石炭が焚かれているのですが、ストーブの上でお餅などを焼くこともできて、それがまた、妙にワクワクと楽しい。ただガタガタ揺れるし、木製の椅子が硬いので、クッションのようなものを持参したほうが安心かもしれません(笑)」。
サンライズ瀬戸
(東京⇐⇒高松・琴平)
『サンライズ瀬戸』は、『サンライズ出雲』と共に定期で走る日本唯一の寝台列車。瀬戸大橋を渡り、高松へ向かう。
「元旦の瀬戸大橋付近での日の出は、7時10分頃です。サンライズ瀬戸の児島駅発が6時53分で、瀬戸大橋を渡りきって、坂出に到着するのが、7時9分ですから、なんとも微妙なダイヤではあるのですが、うまくすれば初日の出を拝めるはず。また、ここでもうひとつ大事なのは、席の取り方です。朝日が昇るのは左手になりますので、できれば通路をはさみ、進行方向左側の席をとるのが望ましい。もし残念ながら右手の席しか取れなかった場合は、時刻に合わせてドア付近に立つか、あるいはミニラウンジで待機するという手もありますよ」。