「吉凶」よりもココが大事!「おみくじ」の正しい引き方
神様、仏様にメッセージをいただく「占い」の簡易版
神社においてご神意を判断する神判は、古くから行われ、『古事記』に「誓約」、『日本書紀』に「短籍」などが記されている。おみくじは本来、吉凶だけを占うのではなく、人生の大事における判断や日々の生活の指針とするために神仏から受け取るメッセージなのだ。
和歌・・・神仏分離令以降、神社のおみくじには有名な歌人が詠んだ和歌、神社にゆかりのある人物が詠んだ和歌が使われるようになった。
漢詩・・・寺院のおみくじは、おみくじのルーツとされる江戸時代の「元三大師御籤」を受け継ぎ、今も漢詩が使われている。
吉凶判断・・・吉の順番には諸説あり、中吉が吉よりよい例もある。湯島天神のように凶がないおみくじもある。
事象別判断・・・一年の具体的な運勢が示されている。手元に置いて時折読み返し、気をつけるようにしたい。
おみくじは持ち帰り、自分の一年間の標に
自分の運勢を神様に託したいという人間の心理は、今も昔も変わらないようだ。『古事記』『日本書紀』には、天照大神と須佐之男命が占いをする話が出てくるし、現在でも伊勢神宮には、三節祭にご奉仕する神職を占いで決める御トという神事がある。
「おみくじのルーツを辿っていくと、『日本書紀』で有間皇子が用いた『短籍』に行き着く。ただ、くじの形式になったのは後々のことで、『元三大師御籤』が起源といわれています」。
國學院大學神道文化学部准教授の藤本頼生さんは、「おみくじをぜひ自分の1年間の標としてほしい」と言う。
「神社の木などに結び付けていく人が多いのですが、むしろ持ち帰って読み返し、『失せ物多し』と書かれていたら忘れ物に気をつけるなど、ご神意を役立てていただきたいですね」。
吉か凶かで一喜一憂する人も多いが、注目したいのはむしろ和歌や漢詩の内容だ。これを基に、吉凶や事象別判断が決められていることも多い。
神社によって、内容もいろいろだ。天神様のおみくじには菅原道真公の和歌が使われているし、明治神宮のおみくじは吉凶がなく、明治天皇や昭憲皇后の和歌が書かれている。伊勢神宮のように、おみくじがない神社もある。
【おみくじの扱い方 正しい心得】
1、おみくじは持ち帰るのが「吉」
凶が出たら所定の場所に結んでいく人が多い。しかし、おみくじに記された内容は神仏からのお言葉。吉凶に関わらず持ち帰り、警句を見返して誡めとするほうがよい。
2、悪い運勢でも日常の糧とする
神仏にお言葉をいただく占い事は、決して無下にすべきではない。悪い内容だからといって、何度も引き直すのは厳禁だ。月日が経った後、または別の社寺で再び授かろう。
藤本頼生さん
國學院大學神道文化学部准教授、國學院大學研究開発推進機構研究開発推進センター准教授を兼担。茨城県橿原神宮権禰宜も務める。97年から11年3月まで、神社本庁に勤務。著書に『神社と神様がよ~くわかる本』(秀和システム)ほか。
※一個人1月号