ロシア艦隊の旗艦スワロフめがけ
戦艦三笠の主砲が一斉に火を噴く!
日露戦争の真実 日本海海戦の戦略を読み解く 第12回
午後2時10分、「三笠」の前方と後方の主砲(30・5センチ)、右舷側の砲が一斉に火を噴いた。鋭敏な砲弾は「スワロフ」艦上で炸裂し、周囲を修羅場に変えた。乗組員はその威力に驚愕した。
午後2時15分、旗艦「スワロフ」の司令塔が直撃弾を浴びた。ロジェストウェンスキー司令長官は重傷を負い、幕僚の多くも死傷した。
「三笠」に続き「敷島」「富士」「朝日」「春日」「日進」が回頭を終え、一斉射撃をくり返した。第2戦隊の装甲巡洋艦「出雲」「吾妻」「常磐」「八雲」「浅間」「磐手」も攻撃に加わった。
砲撃の精度は鎮海湾で猛特訓を積んできた連合艦隊の方が格段に上である。午後2時20分ごろには、「スワロフ」と第2戦艦隊旗艦「オスラービア」(オスリャービャ)、第1戦艦隊2番艦「アレクサンドル3世」が火焔に包まれた。連合艦隊は敵艦隊を「イ」のかたちで押さえるように並航戦を続け、距離が3000メートル以内になったところで榴弾から徹甲弾に切り替えた。被弾した「オスラービア」は海水が流れ込み断末魔を迎えた(午後3時10分に沈没)。
敵艦隊は北東から東、さらに南東と逃げ道を探す。午後2時50分ごろ、旗艦「スワロフ」は南西に針路を変えた。これを見た第1艦隊は一斉回頭して追ったが、「スワロフ」は操縦不能でそのような行動をとったに過ぎなかった。