「なぜJリーグ王者になれなかったのか」浦和・遠藤航が振り返る2016シーズン
移籍1年目。リオ・オリンピック、ACL、チャンピオンシップ……何を感じたのか。
■勝ちを目指した中にあった盲点
そうして第二戦を迎えるわけですが、ホームでも「勝ちに行く」というプランは変わりませんでした。練習中からチームの中で出ていた声は「(下がったら)守りに入ったらやられるからしっかり勝ちに行こう、点を取りに行こう」ということ。監督も「ホームだし、最後は勝って終わろう」と話していました。もちろん僕自身も同じ思いでした。
「点を取りに行って、勝ってチャンピオンになる」
一方で、試合前々日にふと思ったことがあったのも事実でした。それは点を取りに行くことに盲点もあるなということ。
「先制をしたら浦和が俄然有利になる」――メディアを含めそんな論調があったのですが、「鹿島は1点取られてもなにひとつ状況が変わらないんだ」、だったら僕らも「勝ちに行くならば2点を取りに行かなければいけない」と思ったわけです。
結果論かもしれませんが、僕らは「勝ちに行く」ということだけに固執しすぎたのかもしれません。「勝ちに行くなら2点取る」とか「1点取ったらそれを守り切って勝つ」といった「勝つときの勝ち方」が「勝ちに行く」という強い意識によって曖昧になってしまった。
実際、先制し1対0になったとき、得点の喜びと同時に「逆にすごく難しい状況だな」と思ったことを覚えています。それは、周りの選手たちも同じだったように見受けられました。
ご存じのとおり、前半終了間際に失点をし、1対1となって後半を迎えます。
「もう1点取りに行く」
「下がったらやられるぞ、勝ちに行くよ」
ハーフタイム中は、そんな声が飛んでいたと記憶しています。僕自身も「後ろは絶対にやられない、もう失点をしない」「だから点を取ってください!」そんな気持ちで、心にスイッチを入れていました。難しい状況のなかでも、どうしていくべきかという意味では全員の意思が合致していたと思います。