「リゾートしらかみ」冬景色
奥山清行デザイン コンパートメント、売店、カウンター席を備えた新型ブナ編成
すでに何回か乗ったことのある観光列車「リゾートしらかみ」に新型車両が登場したのが2016年夏。そのうち乗りたいと思っているうちに冬がやってきた。そういえば、寒々とした日本海の冬景色を見ながら走る「リゾートしらかみ」には乗ったことがなかったので、二つの目的を達成するために東北新幹線「はやぶさ」の客となって新青森を目指した。
ところが、冬にはよくある強風のため秋田発の「リゾートしらかみ」はかなりの遅れが発生したとのことで、その折返し列車となる青森発の「リゾートしらかみ」は、列車ダイヤの遅れを回復するため弘前~青森間が運休になってしまった。やむをえず、係員の指示に従って、新青森から弘前までオールロングシートの普通電車701系で移動することになった。
ようやく弘前から「リゾートしらかみ」に乗りこんだ。予定通り車両は、新型の「ブナ編成」である(※木へんに無。ブナの漢字は文字化けするパソコンがあるのでカタカナ表記とする)。ハイブリッド車両で、車内のインテリアもブナにちなんで木をあしらったデザインが多用されている。一般席とコンパートメント(個室)のほか売店とカウンター席があるのは「リゾートしらかみ」にとっては新機軸である。奥山清行氏がデザインしたとのことで、水戸岡鋭治氏のデザインとは異なるものの、飾り棚があるなど、どことなくJR九州の観光列車の影響を受けているようだ。
列車は一旦青森方面へ戻り、川辺から進行方向を逆にして五能線に入る。本来なら左手に岩木山が見えるはずだが、この日は曇っていて見えない。景色が楽しめないからというわけではないだろうが、車内で津軽弁による昔話の語りが始まった。先頭車のイベントスペースに行ってみると、地元のおばちゃんが二人、マイクを握って愛想よく話し始めた。しかし、何を言っているのかさっぱり分からない。以前もそうだったが、津軽弁はよそ者には難度が高い。外国語みたいに字幕あると助かる。
語りが終わる頃には、列車は五所川原に停車。さらに進んで鰺ヶ沢を過ぎると待望の日本海が見えてきた。ところが、列車は突然駅でもないところで止まってしまった。何でも強風のため安全確認が必要とのこと。こんなところで何時間も立ち往生されたらどうしようと不安がよぎる。けれども、10分くらいで運転再開となりことなきを得た。
ごつごつした岩が畳のように海岸に広がる千畳敷駅に到着。15分停車する間に海岸を散策できるサービスだが、外は吹雪のようである。しかも先ほどの立ち往生で停車時間は10分程に短縮されるという。それでも、せっかくなのでホームに降りてみた。ホームからでも道路を隔てて海岸がよく見えるのである。さすがに寒いので、誰も海岸まで出かける勇気はないようだ。とはいえ、異形の姿をさらす海岸線を窓越しではなく見ることができ満足だった。
千畳敷から先、五能線はとことん日本海の海岸線を忠実にたどる。人跡未踏のような荒涼とした車窓が飽きることなく続く。先頭車の展望スペースに行き、相客と譲り合いながら海岸線を見たり、撮影をしたりと忙しい。晴れていれば夕陽がゆっくりと日本海の水平線に沈んでいくのが見えるはずだが、この日は鉛色の海が目に入るばかりだ。
しかも冬の日は短く、だんだんと薄暗くなっていく。深浦で青森行きの「リゾートしらかみ」くまげら編成とすれ違う頃には日はとっぷりと暮れ、夜となっていた。車窓が楽しめなくなったので、3号車の売店に行ってみた。グッズや飲食物を売っていて、買うものを選ぶのも楽しいものだ。カウンターでドリンクを飲もうかと思ったが、あまりゆったりしているわけではなく、買い物客も多かったので落ち着かない。結局、買い物を済ませて自分の席へ戻ってしまった。
列車は、その後、2時間ほど走って終点秋田に到着した。心地よい車内なので疲れは少なかったけれど、冬場に車窓を楽しもうと思うなら、ウェスパ椿山駅で降りて不老ふ死温泉あるいは、みちのく温泉で泊まり、翌日改めて午前の「リゾートしらかみ2号」に乗り、2日かけて五能線を旅するのが正解かもしれない。