センター試験は本当に廃止すべきなのか?
『2020年からの教師問題』(ベスト新書)の著者・石川一郎先生にインタビュー!
◆センター試験はこうすればもっと良くなる
ただし、センター試験にも改良すべき点があることは事実です。具体的には、全体のうち3割くらいをもう少し難しい問題にしてもいいかもしれない。
首都圏で中学受験の模擬試験の運営をしている首都圏模試センターが、「思考コード」(図)という指標を発表しています。これは、「思考レベル」と「問題難度」の二つの軸で、問題の性質を分類するための表なのですが、今のセンター試験では、この表の中で言うと「A 知識・理解思考」を問う問題(以下、「A問題」)が全体を占めています。改良するのであれば、このA問題を7割程度にし、残り3割で「B 論理的思考」の問題(以下、B問題)を出すと良いのではと思っています。
B問題を入れることの意味はさまざまありますが、大学側のメリットとして挙げられるのは、生徒の選別がしやすくなることです。高度な思考レベルを持つ生徒を獲得したいという難関大学は、B問題の正答率を一つの指標として、二次試験を受けることのできる受験生を絞り込むことが可能になります。一方、「いや、うちは基礎的な学力さえあればそれで十分ですよ」という大学は、A問題の点数のみを採用すればいい。大学のレベルの高低にかかわらずB問題を入れることには利点があるのです。
あるいは、現行のセンター試験の問題を、出題の仕方を工夫することでB問題へと変化させることも可能です。たとえば、選択肢の中から答えを選ぶような問題について、今までは「正しい答えを●つ選びなさい」というふうに選択肢の中にいくつ答えが入っているのか分かっていたところを、正解がいくつあるか分からないような問い方にします。「正しいものをすべて選びなさい」とするだけで、当てずっぽうでは答えられない、高難度な問題になるのです。
センター廃止後の新テストでは、このようなB2レベルの問題を記述式で答えさせることが検討されていますが、記述式は採点する側の負荷が大きすぎます。今のセンター試験のように選択式で、マークシートだけで同様の力を問うことができるのであれば、それに越したことはないのではないでしょうか。
ただなんにせよ、A問題の重要性は変わりません。A問題がなければそもそも、高校の学習内容を全般的に学べているかどうかが見られませんからね。そこを否定してかかっている「センター試験廃止」という方針に、私は首肯できないのです。
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センター試験廃止は、前代未聞の教育改革の序章に過ぎない!
新しく生まれ変わる教育、果たして教師は適応可能か?
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