安倍首相はなぜ天皇陛下を茶化したのか?
「生前退位」を有識者ごときが賛成反対を
論ずること自体が不敬であり無意味!
藤井聡(内閣官房参与)×適菜収(作家)新春対談「2017年どうなる、どうする?」第2回《集中連載》
藤井 そもそも憲法は日本国家を縛りつけるものになる。デマやウソに基づく雰囲気やノリで改正していいはずがない。でも「橋下人気」なる世論エネルギーも活用しながら憲法が改正されれば、そうなるでしょうね。
適菜 一番タチが悪いのは「改革バカ」です。改革すれば幸福になると信じるのは左翼の発想ですよ。「9条を変えろ」とエサを与えられると、そこしか見ていないで興奮するネトウヨが大勢いるわけです。でも、9条のほかに何を変えようとしているのかを見なければならない。
藤井 憲法は成文法だけど、慣習法を軸に成文化されている。したがって、日本国家の歴史と伝統を軸に作り上げねばならない。憲法改正をしなければならない基本的なロジックは、GHQがあれを書いて、日本がそれを翻訳して作ったということにおいて、その憲法と国体(つまり、日本の伝統に基づくインスチテューション)との間に乖離がある、それを埋める改正が不可欠、というもの。だから、日本の伝統文化を否定するような、国体を否定するような人物が作る憲法は絶対に認められない。
適菜 それが一番大事なことです。憲法とは安倍が考えているように「私たちの理想や国のありかた、未来について語るもの」ではありません。それは国家権力を縛る機能だけではなく、国家の秩序の根本規範、つまり国の形を表現する規範です。そこには当然、伝統による正統性が必要になる。だから、安倍政権下で改憲が目指されるということ自体がグロテスクなんです。
藤井 安倍さんを弁護するとしたら、こういう可能性はある。憲法を変えるためには第一歩を踏み出さなければならない、そのためにはエネルギーが必要だから、橋下人気を使って3分の2を獲得して憲法を一部改正し、憲法が変わるんだという風潮を作りあげてから橋下を切り捨て、そして本来の方向に憲法を変える――。そのために今、橋下と結託をしているだけだ、という可能性です。
適菜 限りなくゼロに近いですけどね。というより、ゼロです。
※藤井聡(内閣官房参与)×適菜収(作家)新春対談「2017年どうなる、どうする?」第3回につづく
【著者プロフィール】
◉藤井聡(ふじい・さとし)
1968年、奈良県生まれ。京都大学大学院工学研究科教授。11年より京都大学レジリエンス研究ユニット長、ならびに第二次安倍内閣・内閣官房参与(防災減災ニューディール担当)。著書に『大衆社会の処方箋 実学としての社会哲学』『社会的ジレンマの処方箋 都市・交通・環境問題のための心理学』『大阪都構想が日本を破壊する』『〈凡庸〉という悪魔』『超インフラ論』、適菜収氏との共著『デモクラシーの毒』『ブラック・デモクラシー』など。
◉適菜 収(てきな・おさむ)
1975年山梨県生まれ。作家。哲学者。ニーチェの代表作『アンチ・クリスト』を現代語訳にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(以上、講談社)、『死ぬ前に後悔しない読書術』(KKベストセラーズ)など。安倍晋三の正体を暴いた渾身の最新刊『安倍でもわかる政治思想入門』(KKベストセラーズ)が発売即重版。全国書店、Amazonにて好評発売中。