体操、マラソン、フィギュアスケート…女子アスリートにとって「生理」は敵だった!?
摂食障害になった女性たちとの30年余りの交流の軌跡が話題に!
しかし、その4年後に亡くなったことで、女子体操のあり方を見直そうという機運も高まります。高度な技を優先するあまり、軽く小さく瘦せた体型を求めすぎているのではと。そこで槍玉にあげられたのが、ルーマニアでナディア・コマネチを金メダリストに育てあげ、女子体操に軽量化革命をもたらしたベラ・カローリー(カーロイ・べーラ)でした。彼が亡命して、米国にもその選手育成システムを持ち込んだことが、クリスティのような状況を招いてしまったというわけです。
もっとも、彼はこう反論しています。
「ところで、どんどん深みにはまってあんな悲惨なことになっていった当時、彼女は体操とはほとんど無縁だったんだ。もっぱら彼女自身と家族の……だったんだ。(略)こういった子どもたちの人間としての悲劇の真の責任者は親なんだ。ママにパパ、それに家族なんだよ。子どもを食わせているのは親だろ。たしかにコーチは太りすぎについて、あれこれ言うさ。しかし、それは当たり前のことで、どのスポーツでも問題にはならない」
実際、女子体操選手がすべて摂食障害になるわけではないですし、まして死亡例などほんの一部です。また、ナショナルチームのトレーナーはこんな比較をしています。現場では、男性の体操関係者が女子選手の尻の贅肉をからかうようなこともよくあるものの、
「メアリ・ルー・レットンはそれを笑い飛ばしていた。クリスティは笑い飛ばせなかった。あの子は奮起した。悲劇としか言いようがないですよ」
ちなみに、レットンもカローリーが育てた金メダリスト。つまり、選手にはそれぞれ性格の違いがあり、悲劇につながるかどうかはそれしだいというわけです。
では、クリスティの性格がどんなものだったかというと——。母親はこう評しています。
「娘は、自分はダメ人間だと思っています。ずっとダメ人間だったと思っているのです。あの子は、自分を愛する、自分が好きになる術を身につけていないのですよ」
もちろん、五輪を期待されるような選手が「ダメ人間」ということはないでしょう。彼女は子供時代から「ET(エクストラ・タフ)」というあだ名をつけられるほど、猛烈な頑張り屋。さらに完璧主義者でもあり、学業成績も全優(オール5)でした。
皮肉なのは、こうした性格が両刃の剣だということです。それは優れたアスリートの資質であると同時に、摂食障害者の資質でもあるわけですから。あるいは、成功できるか悲劇に終わるかというのはコインの裏表みたいなものかもしれません。どちらに出るかは、投げてみないとわからないのです。