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人工知能が「落ちこぼれ」のない教育を実現させる

AIは教育の何を変えるのか?

◆テクノロジーをツールとして使いこなす必要がある

 2015年に雑誌『WIRED』が「人工知能やロボットに奪われない8つの職業」を掲載した。①記憶の演出家②コミュニティオプティマイザー③ロボットアドバイザー④企業文化のエキスパート⑤単純化の専門家⑥輸送アナリスト⑦健康ガイド⑧3Dプリントの構造設計者。どれも今はない職業だ。ただ、例えば⑥を考えてみると、自動運転で長距離トラックの運転手はテクノロジーに取って代われるかもしれないが、そのトラックをどのように効率的に動かすかを分析する職は新たに必要となるということだろう。

 ある人はAI社会が訪れることを恐れ、またある人はその社会が訪れることにワクワクしている。
 私自身は後者だ。なぜなら、コンピュータやパソコンが日常に入ってきた時にも「仕事がなくなるのではないか?」といった議論はあったが、実際になくなったものはあったものの、別の新しい職が生まれた。
 インパクトと進歩の速さという観点では異なるかもしれないが、AIもその時と変わらないと考えている。

 テクノロジーはあくまでツールでしかない。それを使いこなせるかどうかが大切であり、恐れていてもその時代はやって来る。
 英国の物理学者であるスティーヴン・ホーキンス博士は、「強力なAIの登場は、人類にとって最高にもなりえるし、最悪にもなりえる」と述べている。
私たちの考え方次第、使い方次第なのだ。

 5年後、いや1年後、どのようなテクノロジーがこの世界を席巻しているか予想がつかない。それほど技術的な進歩は速い。例えばiPhoneが登場したのは2007年だが、この10年でどれだけの革新的な展開があっただろうか。人は皆手のひらにパソコンを持つことが出来るようになり、AIがゲームの中でも最も難しいと言われていた囲碁で人間に勝ったりと枚挙に暇がない。AIだけではなく今後脳科学やブロックチェーン技術を利用した考えも教育の中で出て来るかもしれない。

 昨年10月から、リクルート次世代教育研究院は教員養成の伝統校である国立・東京学芸大学と共同研究を始めた。「人工知能時代における子どもたちに必要な能力及びこれからの教員養成について」が主なテーマだ。AIと教育をテーマにした共同研究は、国内では初めてではないか。同大学からは学長はじめ約15名の各分野の専門家が参加し、研究会を開催している。
「先生の役割はどのように変化するのか?」「AIが ”適切な” アドバイスをしてしまうと、子どもたちはどこで失敗を経験できるのか?」「AIと先生のアドバイスと子ども自身の意思、この3者をどう考えたら良いのか?」など、AIについて様々な議論が交わされている。今後シンポジウムを開催する予定で、そこで研究の進捗報告が出来ればと考えている。
 

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小宮山 利恵子

こみやま りえこ

リクルート次世代教育研究院院長。1977年東京都生まれ。早稲田大学大学院修了。衆議院、株式会社ベネッセコーポレーション等を経て、2015年11月「スタディサプリ」を展開する株式会社リクルートマーケティングパートナーズ入社。同年12月より現職。財団法人International Women's Club JapanにてSTEM教育推進委員長を務める。全国の学校等で情報モラル啓発講演を実施した経験がある他、ICT教育を中心に国内外問わず幅広く取材活動を行っている。講演、シンポジウム等多数登壇。超党派国会議員連盟「教育におけるICT利活用促進をめざす議員連盟」有識者アドバイザー。東洋経済オンラインにてIT教育の連載を持つ。NewsPicksプロピッカー(教育)。

 


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