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〈京都地名の由来を歩く〉死から戻った境界の橋?「一条戻橋」

筑波大名誉教授、谷川彰英先生の大ヒット作『地名の由来』シリーズ、京都から「占いと怨念の世界」の章で展開された「一条戻橋」の項をご紹介いたします! 

歴史作家の谷川彰英氏が、京都を歩く。今回は一条戻橋。

 二条城の前の通りが堀川通ですが、その堀川通を北に上がってしばらく行くと、一条戻橋という橋があります。晴明神社の斜め前の位置です。この橋には昔からいくつもの不思議な伝説が残されています。

 延喜一八年(九一八)のこと。文章(もんじょう)博士の三善清行(みよしきよづら)が亡くなった。三善清行(八四七〜九一八)は「みよし・きよゆき」とも呼ばれ、平安初期の文章博士でありました。文章博士とは律令制の大学の学科の一つである文章科の教官の長であり、当代一流の学者であったといってよい存在です。文章道とは紀伝道ともいわれ、中国の歴史書などを学ぶ学問でありました。一説によれば、三善清行は妖怪をも屈服させる魔力をもっていたとされます。

 父の死を知らずにその子の浄蔵(じょうぞう)が熊野から京都に帰ってきたのですが、ちょうど堀川の橋を渡ろうとすると、向こうからたいそうな葬列がやってきました。

 「どなたが亡くなったんですか」

と聞くと、こともあろうに自分の父親でありました。

 ぜひ一度会わせてほしいと懇願し、顔をみると、まさに自分の父に間違いない。浄蔵は数珠(じゅず)ずを高くもんで、梵天帝釈(ぼんてんたいしゃく)や四天王、ならびに閻魔(えんま)大王等に祈りを捧げ、「父の魂をいま一度戻してほしい」と叫んだといいます。すると、お棺のなかから、父の声が聞こえて、父子はその夜を橋の上で語り合って明かしたというのです。

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谷川 彰英

たにかわ あきひで

筑波大名誉教授

1945年長野県生まれ。ノンフィクション作家。東京教育大学(現・筑波大学)、同大学院博士課程修了。柳田国男研究で博士(教育学)の学位を取得。筑波大学教授、理事・副学長を歴任するも、退職と同時にノンフィクション作家に転身し、第二の人生を歩む。筑波大学名誉教授。日本地名研究所元所長。主な作品に、『京都 地名の由来を歩く』シリーズ(ベスト新書)(他に、江戸・東京、奈良、名古屋、信州編)、 『大阪「駅名」の謎』シリーズ(祥伝社黄金文庫)(他に、京都奈良、東京編)『戦国武将はなぜ その「地名」をつけたのか?』 (朝日新書)などがある。

 

 

 

 

 

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  • 谷川 彰英
  • 2015.02.26