「トランプ・アメリカ」最悪のシナリオと最高のシナリオは? 3分で分かるトレンドワード【トランプ政権と大統領令】
トランプ政権への疑問を慶應義塾大学教授・渡辺靖氏に解説してもらいました!③
●経済の良し悪しがカギ!トランプ大統領の課題とその先の展望
シズカ…どうすれば……。
渡辺…議会、特に共和党ですね、そして側近や閣僚といった近しい「リアリストな」人間が、トランプさんの衝動的な行き過ぎた部分を抑制できるかどうかが鍵になると思います。
トオル…そういう人がいればいいけれど……。
渡辺…現実としてみれば「もろい政権」とも言えます。メディアとの対決姿勢、民主党からの大きな反発。そして共和党だってトランプさんをもろ手で歓迎しているわけではありませんからね。
シズカ…トランプさんの政策がいい方向に向く可能性はないんでしょうか。
渡辺…いや、トランプさんの経済政策はどんどんアクセルを踏む、レーガノミクスに近いところがあるんですけども、これがうまくいき、持続可能なものになれば、アメリカだけでなく日本やほかの国も恩恵を被れるでしょう。レーガノミクスのときは、結果的にプラザ合意に至り日本は割を食ったわけですが……。またトランプさんのアメリカ第一主義において貿易は大変重要な課題になるわけで「航行の自由」は死活問題です。そこで、世界のいたるところで埋め立てをしている中国に対して、これを断固として許さないという措置を取るのであればそれを歓迎する国というのは、日本も含めて多いと思いますね。
シズカ…なるほど。
渡辺…あとは多少不可解な関係があるにせよ、ロシアとの関係を築くことによって、IS(イスラム国)とか、過激派が掃討されることになればそれはプラスの面になると考えていいんじゃないでしょうか。
トオル…本当に難しいですね。「トランプ・アメリカ」の未来はどうなるんだろう。何をチェックしていればその動向がつかめますか。
渡辺…経済を全面に掲げている大統領なので、経済の良し悪しに対しては敏感にならざるを得ませんよね。これが悪くなるとトランプ支持者の間ですら悲壮感が一気に広がると思います。ただでさえ、各方面と利益相反があり、スキャンダルが絶えない人ですから。
シズカ…経済がうまく回っているかどうか、その判断基準はどこでしょうか。
渡辺…先にも言いましたが、トランプ支持者の多くは、これまで実質賃金が上がらず、雇用も不安定だった人たちです。主に、高校卒業後に就職したような人たちで「単純労働」と言われるような仕事に就いていることが多い。彼・彼女らが、「結局、トランプになっても儲けているのは一部の人間だけだ!」と思ってしまうとその失望感は大きいでしょう。
トオル…アメリカの企業が儲かったり、国が好景気になった、とかそういうところではなく……
渡辺…もちろん、そういう対外的な経済の数字も大事ですが、まずはトランプさんを支持した人たちの「実感ベース」で雇用状況や賃金が改善されるかがポイントになると思います。具体的には、農業、製造業の復権でしょうね。
シズカ・トオル…なるほど。これからもっと注目してみていきたいと思います。先生、ありがとうございました!
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