都市近郊区間と廃止区間、JR札沼線の思い出【後編】
廃止区間を行く
森を抜け、少しは山並みが近づいてくる区間もあったけれど、再びのどかな田園地帯をひた走る。浦臼駅を出ると、当時は1日3往復だけ、その後1日1往復となってしまった閑散区間に入る。どんな辺鄙なところかと想像していたのだが、意外にも開けた田園地帯が続く。峠越えや大河を渡るといった地形上のクライマックスが訪れるわけではなく、淡々と進み、意外にも家並が少々増えて賑やかになったところで、あっけなく終点の新十津川駅に到着した。
右側に一面だけのホームがあり、小さな駅舎もある。線路はホームを出ると、少しだけ先まで延びているが、二階建てのアパートに遮られて終わっていた。かつては、札沼線の名前の通り、留萌本線の石狩沼田駅まで延びていたのだが、1972年に廃止されたのだ。
駅そのものは終着駅らしい雰囲気があるのだが、駅前には5階建ての病院が建っているし、建物も多く、最果て感には乏しい。何だか無理やり線路を断ち切ったような中途半端な感じである。それもそのはず、石狩川を渡れば車で数分のところにJR函館本線の滝川駅があり、便利なところなのだ。
折り返し列車を見送ると、駅は再び静寂に包まれた。しばし、たたずんで余韻を味わったあと、駅近くのタクシー営業所から滝川駅を目指した。聞いていた通り数分で滝川駅に到着した。実にあっけない。新十津川駅周辺に住んでいる人が札幌に出るには、札沼線を利用するよりも滝川駅に出て函館本線を利用する方が遥かに便利なのだ。滝川駅は特急が頻繁に停車するので、利用すれば50数分で札幌に着いてしまうのだ。札沼線で札幌を目指せば、石狩当別駅で乗り換えて2時間15分ほど。これでは勝負にならない。札沼線の末端部が廃止されても、残念だがやむを得ないと感じた。
ただし、ローカル線らしい鄙びた雰囲気や素朴な駅には捨てがたい魅力があったことも事実だ。しかし、あまりにも利用客が少なく、それを考えれば、よくぞ2020年まで残ってくれたと、21世紀に走っていたことが奇跡のようにも思えるのだ。
残った区間は、JR北海道の路線の中では、利用客も多く、元気に活躍している区間なので、廃線となった区間の分まで頑張って走って欲しいと願う次第である。
取材日=2011年8月
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