第14回:「霊体験」(後編)
<第14回>
11月×日【霊体験】(後編)
(前回からの続き。霊感の強い友人Yの話を聞くたびに「こいつは、ウソをついてるのではないか?」と疑念が湧いてきて…)
「霊体験」でYahoo!知恵袋を検索。
やはりここは、Yahoo!知恵袋である。Yahoo!知恵袋に投げられている悩み、それはすべて質問者たちが実生活の中で抱えているものばかりである。
Yahoo!知恵袋に寄せられている幽霊に関するエピソードだけは、ネットの中で唯一信憑性のある霊体験記に違いない。
Yahoo!知恵袋に並んだ「霊感」タグの付いた質疑応答をひとつひとつ読んでいく。
すると、とある質問が目に止まった。
「亡くなった父が、毎晩枕元に立っていて困っています」
なんということだ。やはり幽霊は存在したのだ。
さて、この質問に対して回答者たちはどんなアンサーを?!やはり「塩をまくのがいいですよ」とか「除霊を頼んでみては?」などといった的確なアドバイスが飛び出すのか?!
しかし、その回答たちは、どれも予想を大きく裏切るものばかりであった。
「私も毎晩、死んだ母が枕元に立ちますよ!」
なんだ、このアンサーは。いや、厳密に考えればこれはアンサーですらない。ただの報告だ。なんの解決にもなっていない。「立ちますよ!」じゃないだろう、「立ちますよ!」じゃ。
「人間は一生、死なないらしいですよ」
これも完全に間違ったアンサーだ。なにが言いたいのかが、まずわからない。「人間は一生死なないらしいので、そのお父さんの幽霊も本当は生きてますよ」ということが言いたいのだろうか。だとしても、わけがわからない。だいたい「人間は一生死なないらしい」って、その神をも冒涜する勢いのデマは一体どこから仕入れたのだろう。
「あなたの勘違いでは?」
身も蓋もないアンサーである。
「寝なければいいと思います」
枕元に幽霊が立って困っているのであれば、最初から寝なければいい。まるで「食べるものがなければケーキを食べればいい」に連なるマリーアントワネット的アンサー。完全に民衆の心を無視した回答である。
Yの言っていることが本当だとすれば、友人としていま僕がすべきことはなんだろうか。
やはり、少しでも悩みが晴れる手助けをするために、これらのアンサーをYに伝えることではないのだろうか。
そう思い、Yに電話をかけ直した。
Yは、電話に出なかった。
たぶん、寝ているのだろう。
で、その横ではおばあさんの霊が添い寝をしているのだろう。
「寝なければいい」。それがYにとって、一番の悩み解決となるアドバイスの気がした。
*本連載は、毎週水曜日に更新予定です。