バルセロナがPSG戦で見せた世紀の大逆転。「予兆がなかった」中で見つけた奇跡へのヒント【岩政大樹の現役目線】
チャンピオンズリーグで見せた奇跡の逆転。そこにあった「奇跡の生み出し方」
■キャリアの中にあった「奇跡的」な2試合
僕がキャリアの中で「奇跡的」と思える試合は2つあり、1つは鹿島アントラーズで連覇を達成した2008年のホーム最終戦で、ロスタイムに僕が決勝ゴールを決めて優勝をぐっと引き寄せることになった試合。もう1つは、昨年のJ1昇格プレーオフ準決勝の松本山雅FCとの一戦で、ロスタイムに赤嶺選手が決勝ゴールを決めて、決勝に勝ち上がることができた試合です。
この2試合の2つのゴールの時も、奇跡の予兆、ゴールの匂いみたいなものは全く感じなかったのです。むしろゴールが生まれたのは、ピッチ内のムードでさえ少し厳しそうに感じた頃でした。
バルセロナの奇跡と並べるとちっぽけな僕の体験ですが、今回のバルセロナの試合を見ながら、僕は自分のそのときの心境と重なるものを感じました。
また、その中でラストの数分間に、僕はこの試合と僕が体験した2つの試合にある共通点を見つけました。
はじめは試合を観ながら、いくつかのシーンで単純に「え?」と感じただけでした。ぜひゴールシーンしか見ていない方は4-1と勝ち上がりまであと2点に迫ってからの数分間を流して観てみてほしいと思います。僕はバルセロナの選手たちの冷静な判断に「次はこうプレーするだろう」という読みを外されたのです。
普通は、ラスト数分になるとある程度はっきりとしたプレーを選択します。分かりやすい判断のもとでシンプルにプレーします。
ましてや、あのような押せ押せのムードになれば事故も起こりやすくなっているので、雑な判断を選択しがちになります。
だから、その目線で次のプレーを読みながら見ていた僕は驚かされたのです。
最後のネイマールのパスの選択は最たる例ですが、例えば、その数プレー前のテアシュテーゲンのサイドへのパスも、普通であれば裏へ簡単に流し込むタイミングと時間帯でした。しかし、彼はそれを相手選手がケアしているのを見て瞬時に判断を変え、味方の足元へのパスに選択を冷静に変えています。
「うまい」というよりも「冷静だな」という印象をもちました。
そこで思い出したのです。
鹿島アントラーズでの決勝ゴールの時も、ファジアーノ岡山での決勝ゴールの時もそうだったなと。奇跡が起きるときは「情熱」の中に「冷静」が同居しているときなのです。