コロナ危機での各国政府の巨額財政負担は大丈夫なのか?
アメリカ310.8兆円、日本78.7兆円…MMTは正しいのか!?
コロナ禍で世界では感染者数と死亡者数が相変わらず増加している中、先進国の多くが都市封鎖の解除を自粛の解禁の方向に向かっている。それはなぜか? コロナのせいではなく大恐慌なみに経済の逼迫、破綻をこれ以上避けるためでもある。しかし、ちょっと待てよ!と。先進国での巨額な財政出動の実態とは何なのか? 『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。』が現在ベストセラーの著述家・藤森かよこ氏(福山市立大学名誉教授)が、巨額な財政支援とMMTの関係に斬り込む。藤森氏は、「どんな経済政策でも庶民が翻弄されることにおいては同じだ」と語る。その真意とは?
◼️ウイルスよりも経済危機が怖い
5月10日日本時間午前11時32分現在で、日本における新型コロナウイルスの感染者数は15,663名である。死者は607名で、回復率は37.71%であり、致死率は3.88%である。感染者数は世界32番目である。ウイルス流行の震源地が近隣国だったわりには、被害を比較的小さく留めることができている。https://comical-piece.com/korona-virus-number/
だからであろうか、今の日本人の多くが気になるのは、新型コロナウイルスの感染者数ではない。ワクチンの完成でもない。緊急事態宣言による外出自粛要請のために経済活動が停止したことによって引き起こされた収入減だ。企業の倒産や商店の閉店による失業だ。
私は大企業の正規雇用の会社員だから大丈夫だとか、公務員だから大丈夫だとか、年金生活者だから大丈夫だということはありえない。家族や友人知人の誰かが失業すれば、その影響から逃れることはできない。失業者が増えれば、社会不安は増し犯罪者も増える。人間はいやが応もなく社会的生物であり、ひとりで生きているわけではなく、相互に影響し合っている。
コロナ危機により経済が収縮したら、大企業だからといって安泰とは言えない。経営破綻しないとは限らない。税収が減れば、国家財政も圧迫を受ける。すると増税になるかもしれない。公務員の給与削減にリストラもあるかもしれないし、年金が減額され、国民健康保険や介護保険の掛け金は増額するかもしれない。もしくは、最悪の場合、これらの社会福祉制度が破綻して消えるかもしれない。教育予算も激減するだろう。
確かに新型コロナウイルスではなく、それに引き起こされる経済危機のほうが怖い。日本が、まさに高税超低福祉社会になるかもしれないのだから。
ところが、報道から見える先進国の政府の対応を見ると、どうもそうではないらしいのだ。
◼️前代未聞の大判振る舞いをする各国政府
「日本経済新聞」5月9日朝刊によると、「新型コロナウイルスが拡散した危機制圧へ、各国は糸目を付けずに財政支援を拡充してきた」。対策規模は、今までのところ、アメリカが310.8兆円(GDP比13.6%)であり、日本は78.7兆円(GDP比14.3%)であり、ドイツは75.3兆円(GDP比18.2%)であり、英国は37.0兆円(GDP比12.6%)である。フランスは27.4兆円(GDP比9.5%)で、イタリアは18.0兆円(GDP比8.5%)である。
アメリカの財政支援は巨額である。アメリカの労働人口は1億6300万人だが、3月から4月の一か月で8人に1人が失業した。失業保険申請件数は5月2日までに約2600万件である。失業保険財政の負担は1000億ドル(10.6兆円)を超す可能性がある。5月8日に発表された4月の雇用統計では、アメリカの失業率は14.7%である。1930年前後の大恐慌以来の失業率だ。
さらにアメリカは、大型減税やインフラ投資にも1兆ドル規模の財政出動を追加する考えである。米議会予算局CBO(Congressional Budget Office)によると、アメリカ政府債務のGDP比は次回の会計年度末(2021年9月末)で108%に達する予定だ。これは第二次世界大戦後の1946年度末の106%を超える。
なんという大判振る舞いであろう。
日本はアメリカのATMであると言われて久しく、一時は中国が米国債購入第一位であったが、2019年6月以来世界で一番に米国債を購入している。https://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt まさか、もっと購入しろと言われるのではないかと、私は心配になる。
日本銀行は4月27日の金融政策決定会合で国債購入の上限を設けないと声明した。これまで掲げてきた年80兆円の購入めどを削除した。日本政府は同日に、一律10万円の給付を盛り込んだ補正予算案を国会に提出した。税収減をカバーするための補正予算も避けられないとみられている。