東京ラウンドだけでは見極められない侍ジャパンの懸念点。建山義紀の野球「プロ目線」
WBCどこを見れば良し悪しが分かるのか?
――厳しい意見も多いですが、侍ジャパンは大丈夫でしょうか。
それに対し建山氏ははっきりと言った。
「大丈夫だと思いますよ、僕は問題視していません」
果たして建山氏はどのようなポイントを見て「問題ない」と断言できたのか。WBC、メジャーリーグ、プロ野球そして高校野球。3、4月の野球シーズン開幕に合わせて「野球の見方」を伝える第二回。
【前回の記事はこちら「「侍ジャパンは問題なし」と断言できた最低限の要素。建山義紀の野球「プロ目線」」】
日本のアジャストとアメリカのアジャストは別問題
――WBC公式球へのアジャストは再三言われています。
建山 そうなんですよね。先ほどお話しした調整の時期であることに加え、落ちるボール主体のピッチャーが多いことが要因なのですが……これに関してひとつ懸念点を挙げるとすれば、日本(1、2次ラウンド)でアジャストできていないとしたら、決勝ラウンドが行われるアメリカ・ロサンゼルスでは絶対に投げ切れない、ということです。裏を返すと、日本で「ボールのアジャストがしっかりとできた」と思っていても、ロサンゼルスではそううまくはいかない、ということ。そこだけは油断して欲しくないし、落とし穴にならないように、助言できる人がいてほしいと思います。
――それはアメリカ・ロサンゼルスの気候の問題なのでしょうか。
建山 はい。日本で行う東京ドームは屋内球場であり、気温も保たれている。手にも汗をかきますから、それが適度な湿度を生み出してボールにアジャストできる、という側面があります。一方でこの時期のロサンゼルスは乾燥していますし、肌寒いくらいの気候ですからボールはいつもよりスリップする、と考えたほうがいいでしょう。
――それは例えば秋吉(亮)投手のような、縦の変化ではなく横の変化を主体とするピッチャーでも同じ問題があるのでしょうか。
建山 あると思います。(横の変化である)スライダーピッチャーでも滑ることはありますから。僕自身、テキサス・レンジャーズにいた頃はアリゾナ(アメリカ西部、ロサンゼルスがあるカリフォルニア州の隣の州)で、ニューヨーク・ヤンキースにいた頃は(東部の)フロリダでキャンプをしましたけれど、感覚が全く違うんです。実際、オープン戦での防御率が5点くらい違いました。
――そこまで違うのですか。
建山 はい。極端に言えば、アリゾナではフォークボールがまったく落ちない。メジャーの場合、それが当然のこととして頭に入っていますから、ピッチングコーチもチームもアリゾナで行われるオープン戦に関するピッチャーの成績をまったく気にしていない。分かりやすいところで言えば、上原(浩治)投手。彼はフォークボールが生命線のピッチャーですが、レンジャーズで一緒にプレーしていたときオープン戦の防御率が8点台だったこともあります。でもボストン・レッドソックスに移り、(東部の)フロリダでキャンプを行ったときそんなことはまったくない。そのくらい気候の影響を受けるのがメジャー球。WBCの公式球も少しずつ変わっているようですが、ちょっと気になる点です。
――日本ラウンドでアジャストできているからと対策を怠ると怖い。
建山 そうですね。メジャー経験のある投手がひとりでも入っていればよかったのに……というのはないものねだりですが。上原投手の場合は、入る気が満々だったようですが(笑)、契約上の問題で無理でしたね。
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