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東武の新型特急リバティで日光へ

 2017年4月にデビューする東武鉄道の新型特急リバティに乗って、このたび修復工事が完了し4年振りに公開された日光東照宮の陽明門を見学する日帰りツアーに参加した。

浅草駅に姿を現した新型特急リバティ

 

 

 旅のはじまりは浅草駅。ピカピカの特急リバティの車両がホームに入ってくると誰もがカメラを向ける。シャンパンベージュを主体にしたスタイリッシュなデザインは、従来の東武の特急電車とは一線を画するようで、新たな時代の始まりを予感させる。車内に入ると何もかもが真新しくピカピカで、新車独特のにおいがしてワクワクする。江戸紫のシートは腰掛けやひじ掛けまでもが江戸風味のデザインでしっとりとした和の雰囲気だ。席に落ちつく間もなく、横断幕を持って手を振ってくれる駅員さん達に見送られて静かに発車。ゆっくりと隅田川を渡りはじめると、左前方には東京スカイツリーが聳えている。

車窓に見える日光連山

 北千住駅に停車し、何人かの乗客を乗せると複々線区間に入る。ぐんぐんスピードを上げるものの、揺れもなく車内も実に静かだ。フルアクティブサスペンションという車体動揺防止制御装置のお陰だろう。とても疾走している電車内とは思えない。

 車内らしからぬものといえば、窓と窓の間の柱もそうだ。よく見かけるようなまっすぐな柱ではなく、ちょっとくびれた江戸小紋の縁起物「トンボ」をモチーフとした洒落たデザインでしかも茶色。和室でくつろいでいるかのような錯覚を起こさせるユニークさだ。天井を見上げると白く波打つような造形となっていて、これは川を連想する。すでに渡った隅田川や荒川、これから渡る利根川、渡良瀬川、今日は渡らないけれど鬼怒川温泉に行く時に渡る大谷川、鬼怒川というようにリバティの走るところは川と切っても切れない関係にある。リバティの愛称には隠しテーマとして「川」(River)の意味も含まれているのでは、と想像する。

菜の花が咲く利根川の土手

 春日部駅にも停車し、東武動物公園駅で伊勢崎線と分かれ日光線に入ると、それまでの家屋やマンションがぎっしりと林立した住宅地から一変して、広々とした関東平野が車窓から見渡せる。のびやかな気分となったところで長大な利根川橋梁を一気に渡る。川の土手には菜の花が咲き誇っていて、春になったことを実感する。リバティは北へ北へと進む。

鎧武者が日光名物の煎餅を配付

 静かな車内が急に賑やかになってきた。貫通ドアが開いて、日光東照宮の「百物揃千人武者行列」をイメージした鎧武者が乗客一人一人に日光銘菓の甚五郎煎餅を配り始めたのだ。金と黒の鎧は日光らしい雰囲気であり、これから訪れる日光のPRを兼ねたイベントである。思わぬプレゼントに誰もが顔をほころばせて受け取っていた。

車窓に見える日光連山

 JR両毛線と連絡する栃木駅を出て、新鹿沼駅を通過するあたりから、左手には遠く雄大な日光連山が見えてくる。まだまだ山頂付近は雪が残り、冬の雰囲気だ。やがて日光杉並木が右手から姿を現し、東武鉄道唯一の山岳トンネルである十石坂隧道をあっけなくくぐり抜けると下今市駅に到着する。目下、SL復活運転に向けて構内は工事中。機関車の方向転換をする転車台の設置や赤レンガ色の車庫の建設など作業に余念がなかった。

東武日光駅に登場した日光仮面

 下今市駅を出ると、東武鬼怒川線と分かれ、いよいよ日光だ。山並みが迫る中を最後の力走とばかり勾配を駆けあがり、JR日光駅の脇を通過すると浅草駅を出て1時間50分足らずで東武日光駅に到着する。

 ホームに降り立つと、旅館の女将さん達、観光協会の方々、それに日光仮面という着ぐるみのキャラクターや車内で一緒だった鎧武者が乗客を取り囲んで大歓迎してくれた。横断幕も2つ出て、もみくちゃになりながら記念写真を撮ったり握手をしたりと大賑わいだ。

湯葉をメインとしたランチ.jpg

 人ごみをかき分け、やっとのことで改札を出ると、出迎えの観光バスに乗って駅を離れる。数分で昼食会場に到着し、日光名物の湯葉がメインになった栗おこわの御膳をいただいた。ゆっくりと同行者の方々と会食の後、歩いて日光東照宮へ。東京よりは5度くらい気温が低いのではと思われるほど肌寒かった。しかし、修復が終わり公開されたばかりのまばゆいほどに光り輝く陽明門を眺めていると寒さを忘れ、門をくぐって境内をのんびりと散策した。

復元工事が終わって公開された陽明門

 真新しい車両に乗って、古くて由緒あるものを訪ねる旅。夏にはSL列車も復活し、日光・鬼怒川エリアは、都内を出発したときから戻ってくるまで、楽しみがぎっしり詰まった魅力的な観光ルートに生まれ変わろうとしている。今度は、リバティに乗って鬼怒川温泉や会津方面に旅してみたい。

取材協力=東武鉄道

野田隆『大人の「こだわり」乗り鉄の旅』

野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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