監督への意見も辞さないプルヒッター。アメリカ代表の1番打者に注意
野球解説者・建山義紀がWBCで注目する元チームメイト・キンズラー
プロ野球解説者、建山義紀に聞く「野球の見方」。WBCより、元チームメイトでアメリカ代表の見逃せない選手をご紹介。
【前回はこちら:「カーブは投げるな」。WBCで野球の「世界基準」を象徴するドミニカのベテラン】
アメリカの1番バッターは超プルヒッター
前回ご紹介したエイドリアン・ベルトレともうひとりチームメイトだった選手をご紹介します。
イアン・キンズラー。テキサス・レンジャーズ時代の同僚で、いまはデトロイト・タイガースでプレーする二塁手です。183センチとメジャーでは決して大柄ではない選手ですが、とてもパワフルなバッティングをします。主に1、2番を打つことが多い選手で、昨シーズンには通算200本塁打、200盗塁を達成しました。
このワールドベースボールクラシック(WBC)ではアメリカ代表の1番バッターとして1次ラウンド全試合に先発出場しています。彼はまさにアメリカならでは、という選手で、監督のミーティング中にでも意見をばんばん言える気持ちの強さがあります。
また特徴的なのはバッティングで、彼の打球のほとんどが引っ張り、典型的なプルヒッターです。「俺は、生涯で反対方向にホームランを打ったことがない」と彼自身が言っていたのですが、つまるところホームランは全部引っ張った打球だということです。
対戦相手目線でみれば、長打を打たせたくなければ右方向(キンズラーは右打者)に打たせておけばいいと考えるべきです。侍ジャパンも対戦することがあれば、彼の「引っ張り」には要注意でしょうね。
ご紹介してきたエイドリアン・ベルトレやキンズラーのように、WBCには「世界基準」の選手がたくさんいます。
そもそも「世界基準」とは何か、と言われれば僕は「飛距離」と「スピード」ではないかと思います。
ピッチャーに関して言えばどれだけ速い球を投げられるか。
バッターで言えばどれだけ遠くに飛ばせるか。
その資質を持っている時点でおおきなアドバンテージになる、それが世界の超一流の持っているものでしょう。
じゃあイチロー選手はどうなんだ、と言う声が聞こえそうですが、やはりイチロー選手は別格なんです。そんな中で結果を残しているからすごい。そうそう、飛距離で言えばイチロー選手の同僚でもあるスタントン選手なども注目ですね。
こうした「世界基準」の選手は日本にも生まれ始めました。ダルビッシュ有投手、大谷翔平選手……パワーがある選手が増え、今まで日本人ではできなかった「スピード」を体現しています。まさに「超一流」になれる要素を備えていると言えのではないでしょうか。
WBCでは、純粋にそうした「世界基準」の選手たちの「飛距離」や「スピード」を観て楽しんでほしいですし、日本人にもそれを持った選手が増えてきたことを想像しながら心を躍らせてもらえればいいな、と思っています。