酒井高徳がピッチで見せた闘う姿勢。歩む新たな「レジェンド」への道
ハンブルガーSVを生まれ変わらせた男
新たなレジェンドになるか?
ドイツ北部の大都市ハンブルグ。北欧に近く、ほかのドイツの都市とは違う美しさと、駅裏の怪しい空気のギャップ。港町独特の荒っぽさ。そして、ビートルズが下積み時代を過ごした町だからというわけではないのだろうが、ロックやパンクなどストリートミュージシャンっぽい雰囲気を持つ人が目立つ町。そこに生まれたハンブルガーSVは、ドイツ国内でも屈指の名門クラブだ。近年は毎年のように残留争いを戦いながらも、創設以来50数年、降格の経験がない。
それでも、開幕10試合勝利に恵まれず、シーズン開始早々に最下位が定位置となった今季は、“降格”も現実になるのかと思われていた。しかし、11月16日のホッヘンハイム戦でのキャプテン交代を機に、チームは生まれ変わる。
そのキャプテンが2015年、シュトゥットガルトから加入した酒井高徳だった。ドイツ人の母を持つ酒井だが、ドイツで暮らした経験はなく、ドイツ語が流暢に話せるわけでもなかった。
しかし、指揮官は「新しいカルチャーをチームにもたらしたい」と、チームのために身を粉にして戦う酒井をチーム改革のキーマンに指名する。外国人選手、ましてや世界サッカー界では先進国とは言えない国の選手がキャプテンに指名されたことに現地メディアも驚きを隠さなかった。
それでも酒井がキャプテンを務めてから、4試合負けなしと結果を残した。そして降格圏内を脱出する15位にも浮上。混戦の残留争いに留まり続けている。
3月12日、9位のメングラをホームに迎える。