お笑い【取調室連行24時‼️】ヤクザvs桜の代紋「取り調べ」は脅し・取引・ウソ八百 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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お笑い【取調室連行24時‼️】ヤクザvs桜の代紋「取り調べ」は脅し・取引・ウソ八百

【塀の中はワンダーランドVol.6】どっちがヤクザ⁉️

◼️マル暴のデカは、ヤクザに憧れている奴が多い

  

このイガグリ頭のデカにとって、愛飲するパーラメントは、値段は高いが、憧憬する任侠界の侠どもが好むことから、ある意味、それを真似ることで、自分のステータスとしていたのかもしれなかった。多分そうやって自分の虚栄心を満足させていたのだろう。だから、自分に合っていると言ったのかもしれない。このように、マル暴のデカ連中には、意外にヤクザに憧れている奴が多いのだ。

「マル暴の刑事は、意外にヤクザに憧れている奴は多いです」と著者。(イラスト:さかはら じん)

何でも格好からというが、マル暴の連中はそれを地で行くような格好をしている。だから見た目はヤクザと何ら変わらなかった。

「それよりサカハラ、出す気にならないのか、ション便。ここまできたら、ジタバタするのは止めようぜ」

イガグリ頭は、やっと自分の使命を思い出したかのようにして、本題を切り出してきた。

「何言ってんだよ、別件じゃねぇか。だから関係ねぇよ。どいつもこいつも、まったくうるせぇんだよ」

ボクは吠え、プイと顔を背けてしまった。

すると、それまで気づかなかったが、鉄格子のはまった窓が開いていて、そこから車が行き交う表の光景が目に映った。このときボクは、もしかしたらこの光景をこれから先も、ここで見るようになるかもしれないなという直感が脳裏を過よぎった。

「サカハラ、意地張ったってしょうがねぇぞ。ま、これから長い間、付き合うようになるので、よろしくな」そう言うと、イガグリ頭は取調室を出て行った。

灰皿には、きっちり根元まで吸われたパーラメントの焦げたフィルターが残っていた。

そのあと、四課の面々が入れ替り立ち替りボクの前に座っては、脅したりすかしたりした。ボクはそんなデカ連中にことごとく噛みついた。そんなことから取調室の入口には、何の騒ぎかと覗きに来たデカ連中で、いつの間にか人垣ができていた。

その人垣の間から、太い眉毛を吊り上げた容貌魁偉な係長の顔がヌッと現れた。係長はボクにチラッと視線を走らせると、そのまま椅子に座っている捜査員に視線を向けた。部下の捜査員が係長の意を汲んで椅子から立ち上がると、係長は椅子を軋(きし)ませてそこに座った。そして、やにわに咆えた。

「おい! サカハラ! お前、いい加減、無駄な抵抗やめて、ション便出せ! お前の場合は蓋然(がいぜん)性ってやつで、強制採尿できるんだぞ!」

蓋然性とは、ある事柄が真実として認められる確実性の度合いのことである。

ボクの場合、その確実性とは、過去にシャブの譲り渡しや営利などで実刑判決を受けた犯罪歴があることと、現在も徒党を組んで不法行為などを繰り返して(社会に滞在した3年間、いくつもの署からそれぞれ異なった事件で逮捕状が出されていて、全国指名手配にされたこともあった)いる事実があり、その都度、罰金や処分保留で釈放されている。その数8回ほどだった。また、愚連隊であることなどが、問い合わせ先の東村山署の四課で判明した。

そんなことから、強制採尿の令状を裁判所へ請求することもできるのだ。

「ふざけんじゃねぇよ! 何が蓋然性だぁ!」

ボクは蓋然性の意味を知っていたのでブチ切れ、憤然と立ち上がると、手にしていた携帯電話を思いっきり床へ叩きつけた。シャブの卸元の電話番号がいくつもメモリーしてあったからである。

叩きつけられた携帯電話は無残にも割れて砕け散った。係長は、そんなボクのブチ切れに憮然としてボクを睨みつけていた。気がつくと、野次馬の捜査員たちはいつの間にか散っていなくなっている。

しばらくすると、憤然として仁王立ちしているボクのところへ、散乱した携帯電話の残骸をイガグリ頭が拾い、机の上に置いて出ていった。

「サカハラ、座れ」

係長が言った。ボクは黙ったままその場に立ち尽くし、無言で砕けた携帯電話を見つめていた。

畜生……悔しいけど、この眉毛野郎の言う通りだ。これでオレもシャバとはしばらくお別れだな……。いざとなると、こうやってジタバタしてしまい、シャバ(俗世間、一般社会)へたっぷりの未練を残していたのである。

ボクはハートブレイクの溜息をついていた。このとき、犯罪に明けくれた3年間のリアルな社会生活の映像は、砕け散った携帯電話とともに闇の中へフェードアウトしていった。

『ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜つづく)

  

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 2020年5月27日『塀の中のワンダーランド』
全国書店にて発売!

 新規連載がはじまりました!《元》ヤクザでキリスト教徒《現》建設現場の「墨出し職人」さかはらじんの《生き直し》人生録。「セーラー服と機関銃」ではありません!「塀の中の懲りない面々」ではありません!!「塀の中」滞在時間としては人生の約3分の1。ハンパなく、スケールが大きいかもしれません。

 絶望もがむしゃらに突き抜けた時、見えた希望の光!

 「ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜」です。

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さかはら じん

さかはら じん

1954年生まれ(本名:坂原仁基)、魚座・O型。埼玉県本庄市生まれの東京育ち。幼年 期に母を亡くし、兄と二人の生活で極度の貧困のため小学校1カ月で中退。8歳で父親に 引き取られるも、10歳で継母と決裂。素行の悪さから教護院へ。17歳で傷害・窃盗事件を 起こし横浜・練馬鑑別所。20歳で渡米。ニューヨークのステーキハウスで修行。帰国後、 22歳で覚せい剤所持で逮捕。23歳で父親への積年の恨みから殺害を実行するが、失敗。 銃刀法、覚せい剤使用で中野・府中刑務所でデビューを飾る。28歳出所後、再び覚せい剤 使用で府中刑務所に逆戻り。29歳、本格的にヤクザ道へ突入。以後、府中・新潟・帯広・神戸・ 札幌刑務所の常連として累計20年の「監獄」暮らし。人生54年目、獄中で自分の人生と向き合う不思議な啓示を受け、出所後、キリスト教の教えと出逢う。回心なのか、自分の生き方を悔い改める体験を受ける。現在、ヤクザな生き方を離れ、建築現場の墨出し職人として働く。人は非常事態に弱い。でもボクはその非常事態の中で生き抜いてきた。

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  • さかはらじん
  • 2020.05.27