「脱帽」と「割り切り」。日本代表の10番・香川真司が語ったUAE戦
落とせない一戦で勝利したハリルジャパン。現代サッカーを模索するなかで10番が見せた表情
遅攻という課題
香川が口にした“今のサッカー”とは、現代サッカーのこと。それは攻撃・守備というポジションに関係なく、攻守にわたりタフでハードな“仕事”を求められるということだ。香川自身はどんな仕事を担いピッチに立ったのだろうか?
「中盤のディフェンスで言えば『相手をしっかり捕まえること、(相手エースの)オマルをしっかりと警戒しろ』と言われていた。だけど、そこまで意識し過ぎずに自分たちが主導権を握り、なるべく前からプレスをかけていこうという話は、中盤の選手としました。守備に関して、徹底してやったなかで、攻撃時にどこまで相手を崩せるかというところで、カウンター攻撃で2点を取れたのは、狙い通りだったとは思います」
2点リードをした段階で、チームは試合を掌握することが求められる。当然、相手は攻撃的に出てくるが、それをいなしながら、3点目を狙うのが理想。
しかし、得意の堅守速攻というスタイルばかりを続けていると体力は消耗し、思わぬピンチに繋がる。ボール保持率だけで、試合状況を測ることはできないが、自分たちがボールを保持しているときのほうが自信と安心感があるのも事実。時計の針を進めるためにも、リードをしているからこそパスを繋ぎ、回し続けることの効果がある。なによりも試合のテンポを落とすことで、体力温存の可能性も生まれる。
一方で、それを行うためには、チーム全員の意思統一が欠かせない。一朝一夕でできることではないのだ。
「ポゼッションについては、試合前にも話をしていたけれど、それがどこまでやれるかっていう部分はわからなかった。カウンター攻撃というのは、ある意味で僕たちのストロングポイントだけど、同時に自分たちがゆっくり遅攻する時間帯を作れるかという意味では、ウィークポイントだと思う。遅攻したほうがよい時間帯に、一人ひとりが意識を持って、距離間を縮めながらやれるかっていうのは、これからの課題だと思う」
カウンターといってもロングボールを前線に蹴り出すだけのサッカーではない。ボール奪取後いかに速く、攻めに転じられるか。現代サッカーのテーマはそこにある。しかし、素早く攻撃に転じても、攻撃参加の選手が少なければ、ゴールを決めるのは難しい。
この日の香川もうまくボールを引き出し、前を向くシーンがあったけれど、味方が遠く、ショートパスで相手を抜き去る香川の武器が発揮できなかった。