「脱帽」と「割り切り」。日本代表の10番・香川真司が語ったUAE戦
落とせない一戦で勝利したハリルジャパン。現代サッカーを模索するなかで10番が見せた表情
ハリルが求めたのはロマンではなくリアル
この日のUAE戦では長く共にプレーしてきた岡崎慎司や本田圭佑ではなく、大迫勇也(1990年生まれ)、原口元気(1991年生まれ)、久保裕也(1993年生まれ)らとピッチに立った。1989年生まれの香川よりも若く、今、ヨーロッパのクラブで活躍中の選手たちだ。そして堅守速攻で戦うために最適な攻撃陣と指揮官が判断したメンバーである。
「もちろん、自分自身の表現の仕方としては、やはり物足りないなとは思っています。シュートやシュートに繋がるパスをもっともっと出せるようにしないと。ただそこは割り切るしかない部分でもある。チームのベースのなかで、どうやって、それ(自分を)を表現するのか? 自分のプレーでチームに何かをもたらしたいという気持ちは常にあります。そのためにも周りと共通意識を深める必要を感じています。(今後)3人で、4人、5人と攻撃に加わったときの意識を練習や普段の会話で合わせていければ、またひとつ違うものが生まれてくると思っている。そこは次の課題としてやっていきたいです」
遅攻ばかりで、なかなかゴールを仕留められなかったザックジャパン。しかし、数人が絡み相手を崩すシーンは魅力的だったし、彼らはいつも「ワールドカップでいかに戦うか」を口にし、我々に「なにか起きるんじゃないか」という夢を見せてくれたし、ロマンがあった。
そして、ハリルジャパンは、ロマンよりもリアルを求め、マンツーマンで相手を抑え込むことで、勝利を引き寄せた。「ワールドカップでどんなふうに戦うか」を語る余裕もなく、「ワールドカップへ行くこと」に集中している。
だから、UAE戦後の香川の表情は明るかった。自分らしさよりも、「チームの勝利」に貢献した、その達成感が漲っていた。
「勝つことしか考えてなかったですね。もちろん攻撃で結果を残すことを、攻撃的な選手が求めるのは当たり前のことですけど。なにより勝つことがチームとして次に繋がるから」
たとえば目に見えるゴールという結果が残せずとも、チームを勝たせる仕事をするのが背番号10の仕事なのかもしれない。香川のポジションが安泰というわけではないだろう。これまでと違う指揮官のもと、新しいサッカーを行なおうとしている日本代表で、いかに生き残るのか? そのためには香川もまた新しい武器が求められるに違いない。