【罪と罰の取調室】元ヤクザvsデカ「科捜研」へ送る「尿」をめぐりワル知恵炸裂!
【塀の中はワンダーランドVol.8】それは何の真似だ。チョキか?
元ヤクザでクリスチャン、今建設現場の「墨出し職人」さかはらじんが描く懲役合計21年2カ月の《生き直し》人生録。カタギに戻り10年あまり、罪の代償としての罰を受けてもなお、世間の差別・辛酸ももちろん舐め、信仰で回心した思いを最新刊著作『塀の中はワンダーランド』で著しました。前回は拳銃をめぐる白熱の司法取引の応酬。今回は、元ヤクザがクスリ常習の証拠となる「採尿」をめぐりワル知恵を働かす裏話。罪と罰の「間」には「逃げ道」をさぐる白熱の知恵比べ、そのドラマをお届けします。
◼️名刺代わりに、タップリと
「よし、ション便入れていいぞ」
ポリ容器を抱えたボクは、便器の前で覚せい剤の効きで萎縮して小さくなっているおちんちんを出そうとした。しかし、どこに潜り込んでしまったのか、一向にその姿が見えない。
焦ったボクは、少しガニ股になると、思いっきり、「この野郎!」とばかりに奥まで指を突っ込んであちこち探し回った。迷子のおちんちんは亀が甲羅の中に頭を引っ込めたように、陰嚢の中に理没していたのである。ボクはおちんちんを無理やり引っ張り出すと、ポリ容器の中にチョロチョロと放尿を始めた。
「サカハラ、ション便は容器の底から1センチくらいでいいぞ」背後から捜査員の一人が声をかけてきた。
ボクはその声に、へへー、そうはいかねえよ。何でもハイハイということを聞くと思ったら大間違いだぜ。と思いながら、係長の憎たらしい顔を、この野郎め! と思い出しながら力んだ。始めはチョロチョロと出の悪かったション便も、だんだん勢いよく出始め、タプン! と音がするほど満タンに入れてやった。
手の中で生温かく、ずしりと重くなったポリ容器に蓋をすると、背後の捜査員たちに振り向いて、手にしているポリ容器を差し出した。
デカ連中はその容器を見ると唖然とし、顔を歪めた。
「うわーぁ、サ、カ、ハ、ラ……、お前、こんなにション便入れてどうすんだよ」
捜査員の一人が呆れ果てたような声で嘆いた。
「へっ! 何言ってんだよ。出せ出せって言うから、拳銃の分も気持ちよく出してやったんじゃねぇか。だから遠慮することねぇよ」
泣きそうになっているデカ連中にそう言ってやると、「でもよ、限度ってもんがあるだろうが……」ボクの腰紐を握っていたイガグリ頭が呆れ声をあげた。
「出してほしかったんでしょ。遠慮することはないよ。まっ、オレの名刺代わりだと、係長によろしく言っといてよ」そんなイガグリ頭に追い打ちをかけてやる。
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2020年5月27日『塀の中のワンダーランド』
全国書店にて発売!
新規連載がはじまりました!《元》ヤクザでキリスト教徒《現》建設現場の「墨出し職人」さかはらじんの《生き直し》人生録。「セーラー服と機関銃」ではありません!「塀の中の懲りない面々」ではありません!!「塀の中」滞在時間としては人生の約3分の1。ハンパなく、スケールが大きいかもしれません。
絶望もがむしゃらに突き抜けた時、見えた希望の光!
「ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜」です。