小中高のオンライン化はコロナ危機対策ではなく「国策」
「Society 5.0」、「GIGAスクール構想」、「スーパーシティ構想」、「ムーンショット計画」、すでに国策として進行中
小中学校から高校、大学まで教育界は授業のオンライン化に邁進している。コロナ禍であったから三密を避けてというのが建前ではあったが、実は政策の意図はすでにコロナ禍以前からあったらしい。しかしながら、教育界ではいまだにオンライン教育における問題が噴出している。そして教師たちの授業の準備もこれまで以上に多忙を極めているとも。
著書『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。』で世渡りの真実を説いたのが著述家・藤森かよこ氏(福山市立大学名誉教授)だが、今回も前回につづき「日本の教育界とくに【小中学校、高校編】の未来」を語る。さてこの教育に関する国の政策は(国策)はいったいどうなっていくのか? 親も子も想定しておくべきことにちがいない。
■コロナ危機以前から「国策」である小中高校のオンライン化
5月27日朝刊の「日本経済新聞」の社説のひとつは、「学校再開後もオンライン教育を拡充せよ」である。いい社説であり、最後に「デジタル化を前提に対面授業の質をいかに高めるか。国はその支援に徹してほしい」とある。
大丈夫です。心配無用だ。オンライン教育は、さらに進行する。元に戻ることはない。なぜならば、小学校、中学校、高校のオンライン化は、コロナ危機対策ではなく、コロナ危機以前からの「国策」なのだから。
「GIGAスクール構想」というものが、2019年12月13日に閣議決定された。19日には、文部科学省内に「GIGA スクール実現推進本部」ができた。この構想は安倍首相の鶴の一声で実施された「緊急措置」だ。https://www.mext.go.jp/a_menu/other/1413144_00001.htm
この構想の前に、「教育のICT(Information and Communication Technology)化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」があった。「2020年1人1台」をめざして進めてきた地方交付税での予算措置がなされてきた。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1402835.htm
だが、この地方財政措置が目に見える効果を上げなかった。地方自治体によっては教育のICT化に向けた努力を怠っていた。それで、ICT教育後進国脱却のために打ち上げられたプロジェクトが「GIGAスクール構想」だった。
「GIGAスクール構想」のGIGAとは通信速度で使うギガビットではない。Global and Innovation Gateway for Allの略語である。「すべての人々のためにグローバルで創造性に富んだ道を用意すること」という意味になろうか。「校内LANの整備」「学習者それぞれに1台PC」「学習と校務のクラウド化」「ICTの活用」を初等教育と中等教育の現場で実践するというのが、「GIGAスクール構想」だ。
簡単に言えば、初等教育の児童と中等教育の生徒全員に一台ずつパソコンを提供し、高速大容量のネットワークを日本国内すべての学校に用意し、情報通信技術に慣れさせるという構想である。さらに教務や保健などのデータを一括管理する「統合系校務支援システム」を導入し、教員の負担を減らす構想でもある。
■補正予算2,318億円規模の「GIGAスクール構想」
GIGAスクール構想の2019年度補正予算額は2,318億円(公立2,173億円、私立119億円、国立26億円)であった。2020年度中には、希望する全ての小・中・高等学校、特別支援学校の校内LAN整備を支援するため、整備費用の2分の1を補助する。1人1台の学習者用PCの導入は2023年度までに実現する計画だ。1人あたり最大4万5000円の補助金を支給する。
文部科学省のウエッブサイトを見ると、GIGAスクール用標準仕様の4万5000円のパソコン各種が販売会社とともに紹介されているサイトのリンクが張られている。この4万5000円の中にパソコン設定や導入後の保守や技術サポートなどの費用も入っているのだろうか? 売りっぱなしでは困るけれども、などと私は心配したりする。https://www.learning-innovation.go.jp/giga/
「GIGAスクール構想」実現に向けて、2019年12月から教育現場の教員向けに、文部科学省や「独立行政法人教職員支援機構」などがICTを活用した授業法の要点を教える動画を発信している。
https://www.youtube.com/watch?v=K0wxp_vyRKM
https://www.youtube.com/watch?v=hWjKXopxVWc
また、熊本市などの自治体やベネッセなどの教育産業なども、ICTを活用した授業実践のサンプル動画を発信している。
つまり、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために学校が休校になり、対面型授業ができなくなって、学校はオンライン化に急いで対処しなければならなくなったわけではない。教育現場でICTを活用するばかりでなく、ICTは不登校児や病気や障害で登校できない児童生徒のための遠隔授業にも利用できることはわかっていた。
ただ、地方自治体や個別の学校が、なんとしてでもICT活用を促進しなければならないという国策に関する理解が不十分であったようなのだ。
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