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岩田健太郎医師「科学は検証を経て、真実に少しずつ近づいていく」【緊急連載④最終回】

藤井聡氏公開質問状への見解(第4回:最終回)

◼️真実に少しずつ近づいていく

 例えば「コロナウイルスはこういうウイルスで、こうやって診断して、治療して、対応すればいい」とか、「ロックダウンは〇月〇日にこういうレベルでやって、△月△日に解除すればいい」という正解があると仮定しましょう。でも、その真実は誰にもわからないわけですよね。カント(Immanuel Kant:1724-1804)が「物自体」という概念を提唱していますが、それと同じく、真実は誰にも見えないわけです。

イマヌエル・カント(Immanuel Kant:1724-1804)/写真:パブリックドメイン

 けれども、「見えない」というのは「何もできない」ことではない。これまでの歴史の中で我々人類は何百年、何千年とかけて、その真実に近づこうと努力をしてきたわけであり、そのひとつの形が科学なわけですよね。

 ニュートンとかによる力学の原理がなかった時代より、ある時代のほうがはるかに我々は前進しています。相対性理論がなかった時代よりはある時代、量子力学がなかった時代よりはある時代、そしてPCRがなかった時代よりはある時代のほうがはるかに進歩している。

 PCRはたくさん間違えるし、失敗もあるけれど、PCRがなかった時代に比べるとそれこそ驚異的な前進ですよ。なんと言っても「ウイルスが見つけられている」わけですから。

 1918年のスペイン風邪の時代にはそもそもインフルエンザウイルス感染症という概念すら確立していませんでした。我々はものすごく進化した形で議論している。「PCRにはこんな欠点があるよ」という議論ができるということがそもそも、1918年のスペイン風邪の時代とは全然違う次元の議論を我々がしている証左ですよね。

 我々には真実は見えないけれども、確実に近づいてはいる。ですから、そうやって「近づいていく」ことを続けていくことがとても大事なんです。

 本【緊急連載】おわり。(本文構成:甲斐荘秀生)

 

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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