【元芸人・作家の松野大介】コロナ報道で視聴率稼ぎに勤しんだテレビ報道の大罪(前編)
「コロナ回想録」(前編)
◼️ テレビの煽り報道を検証する【2月~4月】
中国の武漢から広まり始めた頃からクルーズ船に感染者が出た時期までは、多くの人はニュースをぼんやりと眺めていただろう。某ニュース番組で、ある専門家(ぼんやり観てるから名前は記憶にない)は、「インフルエンザと変わりない」とか言った。私はインフルについには毎年国内で数干人が亡くなり、2019年は3000人、関連死を含め1万人、感染者は1000万人と知っていたので、仮に日本に上陸したらその程度の感染はあるのか? と思った。
その後、欧州からアメリカへと感染が拡がり、ロックダウンが大々的に報じられると、自粛ムードが日本を覆った。同時に、「新しいウイルス」とテレビで専門家や司会者が言い始めた。確かに新しいが、存在しているコロナの新型であるのに、人々の間では「コロナ」というワードがひとり歩きし始めていた。
気づくと、「インフルと変わりない」という話をした専門家はテレビで観なくなった(知名度が低いから使われなくなったか、あるいは出演を断ったのかの詳細は知らないが)。他にも、インフルと比較する専門家は、私が知る限りほぼいない。そこで私は違和感を持った。
災害や原発事故があるとすぐ調べるビビリな私は、自分なりに新型コロナの他国の状況を検索。見つけたフランスの記事では、テレビで保険大臣(日本で言う厚生労働大臣)がインタビューに応じていた。
(MC)——「インフルエンザでは○千人(正確な人数は忘れた)亡くなっているが、新型コロナは恐れる必要があるのか」との問いに対し、まだ未知数のウイルスだからという趣旨で、インフルと比較して説明していた。
時を経ていくに新型コロナの性質がサイトに載るようになり、インフルのように高齢者になればなるほど、特に疾患の持病がある人ほど重症化しやすく、はっきりした傾向が感じられた。
しかしその時にはワイドショーやニュース報道はウイルスの性質よりも、感染者探しに夢中だった。「ライブハウスで感染者! この店でクラスター」などと、犯人探しのように場所、感染者の年齢などを特定していた。どの番組も感染者と死者を一日ごとに、都道府県別に棒グラフで発表し、コロナを全面的に扱い出した。
この時の私はテレビへの違和感はまだ小さかった。 理由は3つ。
1 新型であり、危険性が未だ未知の部分がある
2 ワクチンがない
3 欧米の感染が速いので、日本もああなるのではないかという不安
この感情はたいていの人と共有できるものではないか? 家にこもる人が多いこともあって視聴率を上げてきたワイドショーやニュース報道が完全に勢いづいたのは3月29日、志村けんさんの死亡の時だ。これで日本中が震えあがった。視聴率はさらに上がり、以前は3%くらいの番組も倍増。テレビは著名人の死亡やコロナ感染者を徹底的にあぶり出した。感染の辛さを伝えたいからと、感染したタレントは病院から動画を配信し、テレビが次々にクローズアップ。
しかし志村さんは、「コロナによる肺炎」で亡くなったのに、多くの番組は「志村さんはコロナでお亡くなりに」と言っている。例えばインフルによる肺炎なら〝肺炎で亡くなった〟(つまりインフルの関連死亡)となるが、新型コロナでは肺炎で死んでも、「コロナで死んだ」という直接死因に勘定するような言い方が暗黙ルールとしてできていた。そして、「若い方も重篤になる危険が!」「一気に悪化する危険なウイルス」などとアナウンスされた。
米国スタンフォード大学で、住人に抗体検査をしたところ、感染者は確認されている数より50倍以上の可能性も、との結果。
それは検索して知ったのだが、日本で大きく報じられたのは、ニューヨーク州が7500人、次に3000人に検査し、平たく言うと実際の感染者は10倍いるとの結果。検査の正確性により誤差もあるだろうが、この報告で私が最初に思ったのは、「感染しても気づかない人が多いってことで、弱いウイルスじゃないか?」ということだった。
それまでも半数~8割が軽症(割合は日毎に上下するし、軽症の中にも辛い症状はある。呼吸器を付けないと軽症扱いらしい)、2割が重篤と言われてきたが、感染者が仮に10倍と見積もって分母が10倍になれば、9割無症状、5~8分軽症、2分重篤という分数になるのではないか? スタンフォード大の研究では致死率は0.2%程度、ニューヨーク州では0.5%程度という予測が。分母が10倍になったから当たり前。インフルはおよそ0.1%。