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「ポスト・トゥルース」時代に必要な大前提

トランプ・タワーでオバマが盗聴をしていた――!?

「フェイクニュース」は過去も世の中を動かしていた?

「オバマ大統領がトランプ・タワーで盗聴していたことが分かった!」

 ドナルド・トランプ大統領は先月、ツイッターを通して突然このような爆弾発言をした。
 様々な調査が行われた結果、どうやらはっきりとした根拠のない発言だったことがわかった。だが、このように嘘か本当かは別としてとにかく人々が驚くような発言をして注目を集めるのが「トランプ流」のやり方である。

 嘘か本当かわからないが、とにかく過激で人目を引くような「フェイクニュース」が、現代の政治を動かす大きな要因になっていると言われている。EU離脱を巡るイギリスの国民投票では、離脱賛成派が主張していたEUに対するイギリスの負担額の数値が虚偽であったことが投票後に明らかになったという事例もあった。
 アメリカ、イギリスという民主主義の先進国でさえ、少なからぬ数の人々が投票の際に判断を惑わされたのである。 

 最近では、こういった事態は「ポスト・トゥルース(真実)」という言葉でも呼ばれている。だが、これは必ずしも現代だけに特有な新しい問題というわけではない。
 近代社会では、ジャーナリズムとマスメディアが発達すると共に、意図的に世論を誘導するためのプロパガンダが盛んに行われたり、メディアの部数競争のために過激な報道が行われてきた。日本でも、戦時中には「大本営発表」の「フェイクニュース」が垂れ流されていた。

 かつてはニュースを大規模に発信できるのは大手メディアか権力を握っている機関に限られていた一方で、現代に特有なのは、インターネットとSNSの発達や、鮮明な写真や動画を手軽に撮って発信できるスマートフォンの普及により、誰もが情報の発信元となれるようになったことだろう。
ドナルド・トランプを知るためにヒューイ・ロングを知る

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大賀 祐樹

おおが ゆうき

1980年生まれ。博士(学術)。専門は思想史。

著書に『リチャード・ローティ 1931-2007 リベラル・アイロニストの思想』(藤原書店)、『希望の思想 プラグマティズム入門』 (筑摩選書) がある。


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