例えば、攻撃がうまくいかないとき改善する方法【岩政大樹の現役目線】
相反するように見えるものが処方箋になる
相反するように見えるものが処方箋になる
この相互の作用の面で、僕はサッカーから学んだことがあります。それは、「相反するように見えるものが処方箋になる」ということです。
例えば、試合において攻撃がうまくいっていないときに、それを改善する薬は、攻撃を直すことではなく、守備を直すことです。チームの攻撃がうまくいかない時期には、「攻撃をどうしたらいいか」と悩みがちですが、実はあまり深く考えずに守備からやり直し、いい形でボールを取れるようにしたら、すぐさま攻撃がうまく回り出したりします。
メンタルとフィジカルも同様です。試合が始まって「なんとなく気持ちが乗らないな」という日も人間ですから当然あります。そんなときになんとか気持ちを奮い立たそうと、メンタルの問題をメンタルで解決しようとしても無理があります。
僕はそんな時はフィジカルからアプローチするようにしています。つまり、メンタルは一旦横に置いておいて、いい状態の体の動かし方に意識を集中し、やるべきプレーやいるべき立ち位置に集中するのです。すると自然に気持ちは後から高まってきます。
逆も同様で、「体が重いな」という日には、メンタルの方で自分を盛り上げていき、後からフィジカルが追いついてくる、という感覚で、自分への処方箋を考えるようにしています。
こうしたことはサッカーには実はたくさんあります。だから、僕はいつも自分が考えている問題点を違う視点から考え直す、という作業を意識してやっています。
つまり、攻撃と守備も、メンタルとフィジカルも、はたまた勉強とサッカーも、本来は「両立させる」という概念が間違いなのかもしれません。2つは違うところに並び立っているように見えるものですが、実はそれらは繋がっていて、混ざり合っているものなのです。
「攻撃がダメだったら守備で」、「メンタルがダメだったらフィジカルで」、「サッカーがダメだったら勉強で」ではなく、「攻撃のために守備を」、「メンタルのためにフィジカルを」、「サッカーのために勉強を」という感覚が適切だと思います。
山口県の瀬戸内海に浮かぶ島で育った日々のことをよく思い出します。あの頃の自分にサッカー選手になる夢は描けず、将来の明確な未来像のために何かを頑張っていたわけではありませんでした。
僕にあったのは「今を生きる」ことだったと思っています。好きなことも嫌いなことも、一生懸命に取り組んだことだけが今に繋がっています。
だから今、僕はもう一度、将来の自分は決めずに、一生懸命に今を生きることを自分に課すことだけ決めています。
「好きなことを思い切りやること」と「やらなければいけないことをしっかりとやること」を両立させながら。