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「うまい棒」はなぜ定価10円をキープし続けられているのか?

やおきんの人気駄菓子、誕生秘話。

誕生してから38年間で、通算150億本を販売した人気駄菓子「うまい棒」。なぜずっと定価10円なのか? ユニークなフレーバーの秘密とは? 販売元のやおきんの顧問、石井俊夫さんにお話を聞いた。

◆“ソサチバピヤメン”から始まった国民的お菓子

 うまい棒が誕生したのは1979年の夏。以来38年間、子供たちに愛され続け、今では年間約6億本を出荷し、通算で150億本超の売り上げを記録する超ロングセラー商品となった。
 販売元のやおきんの顧問、石井俊夫さんはうまい棒誕生の年に入社。商品開発も、出荷も配送も、ほとんどすべての業務を行っていたという、いわばうまい棒の歴史を知るキーマンだ。石井さんが当時を振り返る。

「押出成形の機械ができて、コーンを長い棒状に出すことが可能になったことがうまい棒誕生のきっかけです。ただ、商品化まで簡単ではありませんでした。コーンの品種の違いや、湿気、熱によってなかなか均等に揃わず、コーンの棒が暴れて出てきたり、長かったり、細かったりと。うまい棒の製造工場であるリスカと相談しながら試行錯誤の連続でした」。

 困難を乗り越えて、最初に発売したフレーバーはソース味。ほぼ同時期にサラミ味、カレー味。そして翌1980年にはチーズ味、バーガー味、やさいサラダ味が続き、創成期を支えた“初期メンバー”が揃った。

 

「発売当時、うま棒の味付けをソサチバピヤメン(ソース味、サラミ味、チーズ味、バーガー味、ピザ味、やさい味、明太子味の頭文字)と呼んでいました。そのほとんどが今も定番商品です。子供は意外と、サラミや明太子など大人っぽい味が好きですね」(石井さん)。

 それにしても不思議なのは、38年も定価10円をキープし続けていることだ。「コストを下げても品物が悪くては売れません。駄菓子を子供騙しという人がいるけど子供は騙せない。だから常に気を付けているのは品質を絶対に落とさないこと。そのため他の部分でコスト削減を図っています。効率よく搬送する工夫をしたりね。なかでも、一番大きいのは業者の好意的な協力。段ボール屋さんやフィルム業者さんなど、みなさん子供の頃にうまい棒を食べていた“うまい棒世代”で、コストダウンの相談に乗ってくれるのです」(石井さん) 

 うまい棒といえば、ユニークなフレーバーを出して、しばしば世間をあっと驚かすことでも知られる。
「失敗もありますよ。印象的なのはギョ!the味(餃子味、82年発売)。肉の味を感じたし、食べた後に酢醤油の酸味も残る。上質な仕上がりだったんだけど、匂いがきつくてね。製造工場の人も目にしみる(笑)」(石井さん)。

 38歳となったうまい棒だが、今後も新しいフレーバーの挑戦は続く。
「もっとプレミアム感のある味を出したいですね。できれば2種類は入れ替えたいなと思って開発中なんですけど、試行錯誤の連続。いつ完成するかは読めないけど、乞うご期待ですね」(石井さん)。
『一個人』2017年5月号より〉

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