【帯広刑務所編】道産子兄ィの右ストレートが決まった! 懲罰覚悟で男の意気地!! チロリン村頂上決戦③《懲役合計21年2カ月》
凶悪で愉快な塀の中の住人たちVol.11
元ヤクザでクリスチャン、今建設現場の「墨出し職人」さかはらじんが描く懲役合計21年2カ月の《生き直し》人生録。カタギに戻り10年あまり、罪の代償としての罰を受けてもなお、世間の差別・辛酸ももちろん舐め、信仰で回心した思いを最新刊著作『塀の中はワンダーランド』で著しました。実刑2年2カ月!
帯広刑務所で印刷工場の配役となったじんさんは、通称「チロリン村」、電気ソケットを作る「モタ」と呼ばれる班でお仕事開始。道産子兄ィとのお仕事バトルで盛り上がった頃、この兄ィへ函館の某が・・・飛んだ(喧嘩)‼️
塀の中の文字どうり殴り合いのドラマです。
■チロリン村頂上決戦③
実はボクは、この意地の張り合いをした木佐兄ィに、どこか男らしさを感じていたのである。つまらないことで普段からこの兄ィを目の仇にしている、「函館の某」という堅気の人間の「厄マチ」に、この兄ィはじっと耐え忍んでいたからだ。某の刑期は8カ月。兄ィの刑期は6年だった。この道産子兄ィも、ボクが機械場へ移動になってしばらくすると、製本へ移動になった。
そんなあるとき、この兄ィと函館の某が、兄ィが仕事をしている製本のところで殴り合いとなった。某が飛んだ(喧嘩をしかけた)のだ。兄ィは小柄で、某は逆に大柄だったが、兄ィも負けていない。飛びかかってきた某の顔面に兄ィの右ストレートが決まった。兄ィの我慢も、さすがに臨界点に達してしまい、懲罰覚悟で男の意気地を見せたのだ。
このとき、騒ぎに気づいた担当が素早く担当台の上から降りてくると、太い二の腕で二人の首根っこを掴み、ざわめき立つ受刑者たちに向かって、
「俺の工場を勝手に乱すんじゃねえ! オメエら座ってろォ!」
工場中に響き渡るように啖呵を切りながら、当時の柔道界の第一人者、山下泰裕のようなデカイ身体で二人を取り押さえた。
結局二人は、非常ベルで駆けつけた警備隊によって取り押さえられ、連行されていった。
函館の某とボクは、ときどき口を利く程度の仲であったが、それなりに仲良くしていた。
某は日頃、兄ィの「厄マチ」を機械場にいるボクの前で切りながら、「いつか飛んでやる」と言っていた。そんな某にボクは迎合せず、ただ黙って聞くだけだった。某は、自分の吐いた言葉に追い詰められて、飛ばざるを得なかっただけなのだ。
この道産子兄ィには「外」で待っている彼女がいた。その彼女は毎月遠いところから兄ィの面会に来ていた。
もし兄ィが某の厄マチの雑音に負けて堪忍袋の緒を切ってしまえば、毎月数回できていた「面会」という権利を剥奪されてしまい、彼女を悲しませてしまうことになる。健気な彼女を悲しませたくない一心から、兄ィは独りじっと耐えていたのだろう。
6年の刑期で月に2回の面会ができるようになる3級になるまで、その累進には数年かかる。受刑者たちは誰もが4級から3級へ、少しでも早く累進できることを望み、楽しみにしているのである。
3級になれば、面会も一つ増え、2カ月に1回は「集会」といって、お菓子も供することができるようになるのだ。
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2020年5月27日『塀の中のワンダーランド』
全国書店にて発売!
新規連載がはじまりました!《元》ヤクザでキリスト教徒《現》建設現場の「墨出し職人」さかはらじんの《生き直し》人生録。「セーラー服と機関銃」ではありません!「塀の中の懲りない面々」ではありません!!「塀の中」滞在時間としては人生の約3分の1。ハンパなく、スケールが大きいかもしれません。
絶望もがむしゃらに突き抜けた時、見えた希望の光!
「ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜」です。