不安な時こそ潜在能力が発揮される理由【久瑠あさ美メンタルトレーニング】
久瑠あさ美の「コロナ禍以後をいかに生きるか」Vol.3
■逆境こそが人生最大の醍醐味!
本来、自分の人生は自分で決めなくてはいけないものだったんです。
しかし、それを決めなくても済んでいたのがこれまでの社会だった。これまでの社会では、潜在能力を発揮しないほうが楽だった。世の中の流れにただ乗るほうが生きやすかった。それだけです。
しかし時代が変わると、流れに乗った人は飲み込まれる。
ですから私のメンタル・トレーニングでは、何かが起こる前にこの先の未来に意識を向けます。「そのとき、自分、どうする?」という状況に身を置いてみることで、自らの潜在的な力を先回りして引き出していきます。そうすることで、その先、その状況がやって来たとき、「苦」モードではなく、「楽」モードで対応できるマインドに鍛え挙げておくことができるのです。
これまでの安定した社会においては、トレーニングのたびに「なんでこんなことをして、マインドを鍛える必要があるのか」と説明が必要でした。それは何も起きていない状況下においては、「自分、どうする」と問いかけなくても生きていけたからです。
しかしコロナ禍では、自分の置かれた状況がこれからどうなるかわからないから、すでにマインドが不安定になっています。不安定なマインドが顕わになった以上、鍛え直さないといけないことは明白です。
だから現在の状況は、周りの流れに乗ることしかできなかったこれまでの自分から、自分軸を取り戻し本来の自分へと戻るチャンスなんです。
喩えばボクサーなら、ダウンカウントを取られ、もう立ち上がる体力もない。そこから這い上がるのか、横たわったまま10カウントを聞くのか、選択は自分次第です。
ここでずっと自分を試して生きてきた選手は、肉体的にはネガティブな状況下におかれても、マインドでは負けていないので、精神的にポジティブな状況へと昇華するんです。「ここから這い上がったら、自分はヒーローになれる」というイメージの力で、肉体的な不利を覆すんです。
相手からすれば、もう立ち上がらないと思った対戦相手が這い上がる。肉体的には「自分の勝ちだ」だと思っていたところから、対戦相手のマインドに圧され、怯む瞬間ができる。その勝敗の最後を決めるのはその選手の生き様です。そこに魅せられて、観る者は心を動かされるのだと思います。
トップアスリートの世界は、そういった潜在的なものが勝敗を分かつ世界なのです。
スポーツの場合は対戦相手がいるわけですが、それでは私たちの人生の「対戦相手」とは何かと言うと、それは自分の人生、自分の未来そのものです。
未来からの「どうする?」という問いかけに対して、常に心構えができている。それが「自分の人生を自分で決める」ということです。
「未来からの問いかけ」に一旦は怯み、やられてしまうかもしれない。つまりこれが「逆境」ですね。でも、そこからどう立ち上がるか、這い上がるかがあなたの人生を決めます。だから逆境こそが、人生の一番の醍醐味なんです。
鈴木)——そういう時が一番面白いですよね。
久瑠)——そうなんです。たとえば「できっこない、全然前向きになれそうな気がしません」と言う人がいたとしたら、その人に足りないのは、それをするための能力ではなく、自分の置かれた逆境をイメージして、ドラマとして捉えるマインド力です。中途半端なコケ方ではなく、本気でコケる方がドラマの見甲斐がある。その失敗すら魅力的に見えるヒーローになれるかどうか、「そのときどうするか?」という逆境の瞬間が一番の魅せ場なんです。だから前向きになれない瞬間がやってきたとしても、「そこにどう向き合うのか」を人生から問われているのだと捉え、自らのマインドに火がつくその時まで、自分を絶対に見捨ててはいけないんです。
その時こそ救世主が登場する絶好の場面、つまり、自らの潜在的能力を発揮するチャンスでもあるということです。
(構成・動画制作/甲斐荘秀生)
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