「関わる“人”次第で、どこの国でも良いシューズは作れます」
日本のシューズブランド、mythography(ミソグラフィー)のコト
モノ・ト・コト【第1回】ベイクルーズ プレス・青木志門が選ぶブランド&アイテムをピックアップ!
まずは、シューズデザイナーとして独り立ちするまでのお話を聞こう
編集 本日は宜しくお願いします。まずは〈ミソグラフィー〉というブランドを始められた経緯について、お聞きできればと思います。
宮城 僕は元々、某シューズブランドで販売の仕事をしていたんです。働き始めた当初から「靴のデザイナーになりたいな」という思いはずっとあって。仕事を頑張るかたわら、独学で勉強をしていました。自分で絵型を描いてみたり、靴を分解してどんな構造になっているのか見てみたり。そんなことを7年続けて20代も後半になり、いよいよ自分で表現しなくてはいられない、というタイミングが来たんです。そこで、浅草にあるシューズメーカーに転職をしたのが、デザイナーとしての始まりです。
青木 浅草の会社では、転職直後はどのようなお仕事をされていたんですか?
宮城 勤めていた浅草の会社は主にOEM(Original Equipment Manufacturingの略。他ブランドからの受注を受けて商品開発を行なうことを指す)を引き受けていた会社でした。当時需要のあったいわゆる“お兄系”の流れもあり、最初の頃は「マルイメン」「109」などに卸すシューズを制作していましたね。OEMでの生産を1年間経験した後、いよいよその会社のオリジナルブランド〈ミソグラフィー〉を立ち上げることになります。これがブランドの最初ですね。
編集 ちなみに、〈ミソグラフィー〉というブランド名についてお聞きしたいのですが、あまり耳慣れない言葉ですよね? どのようにして名前を付けられたのですか?
宮城 シューズブランドに勤めながらの7年間、自分なりに“きちんとシーズンテーマと区切りを設けた靴作りがしたい”という構想があったんです。なので当時、ブランドのデザイナーに自分で描いた絵型を毎シーズン提出するなどして、自分の中で物作りのサイクルを作っていきました。話が前後していますが、そもそも“mythography”という言葉には「神話」という意味があるんですね。僕は年4回のテーマを決める際に、既存の物や人ではなく、自分の中で完結している“架空の物語”をイメージソースとしています。いわば、シーズンごとに展開される「神話」「神話芸術」ですね。そう考えた時に、この言葉がしっくりくるなと思って〈ミソグラフィー〉に決めました。
編集 最初にお勤めされていたというシューズブランドは、今作られている〈ミソグラフィー〉とは随分テイストが異なる気がします。
宮城 確かに、在籍時にデザイナーに提出していたデザインも、そのブランドの色とはかけ離れていましたね。
青木 最初から、自分の中で作りたいモノが固まっていたのですね。ブレずに続けられるのは素晴らしいです。