今さら聞けない「教育勅語」。憲法の先生が教えてくれた、内容以前の問題とは?
【教育勅語】を憲法学者・木村草太氏が徹底解説1/3
●教育勅語を教科書として使うと法に反する指導が行われる
木村…教育勅語の文章自体はよく練られていて、魅力が全くないわけではない、と思います。ただそれは「大日本帝国下で」という条件付きで意味を持つ文章です。大日本帝国の国体と切り放されればその魅力もなくなります。そして、2つめの問題点ですが、現代では、教育勅語の内容自体にも問題があります。結局は「大日本帝国のためによき臣民たれ」という内容なので、どう考えても現在の自由主義や民主主義の理念には合っていません。さらに、臣民を侵略戦争に駆り出すために使われた負の歴史もある。そういう点からしても、教育現場で使うには非常に不適切となるわけです。
シズカ…先生のフィールドである、“法”での扱いはどうなるんでしょう。教育現場で道徳の教科書として使うのは違法になるんですか?
木村…学校教育の内容は、学校教育法で定められています。それは教科書に従って、学習指導要領に則って行われないといけませんが、学習指導要領には「大日本帝国の心得を教えよ」とは書かれていません。つまり、教育勅語を教科書として使うと法に反する指導が行われることになります。仮に「大日本帝国の心得を教えよ」と学習指導要領に書き込んだとしても、今度は日本国憲法の主旨に明らかに違反することになる。本来受けるべき教育と違うものを施すことになり、子どもたちから教育を受ける権利を奪うことにもなりますよね。
トオル…やっぱり学校教育法・日本国憲法、いずれにも反した存在なんだね。
シズカ…でも木村先生、教育勅語が違法ならば例えばキリスト系の学校はどうなるのかしら? 賛美歌を皆で歌ったりする学校もありますよね?
木村…今回の問題と宗教を同列に比べるのは乱暴です。確かにキリスト系の学校には聖書の時間があり、賛美歌を歌ったりしますが、それは「信教の自由」で、憲法で認められた範囲でしょう。しかし、教育勅語は宗教上の文書ではなく、大日本帝国の臣民に天皇が向けて書いた文書ですよね。
トオル…先生、さきほどの野球チームの例で言い換えていただくことはできますか?
木村…なかなか野球好きと見ました(笑)。キリスト教徒や仏教徒がベイスターズの応援席にいても何ら問題はありませんが、大洋ホエールズを応援するために大洋ホエールズ時代の応援歌を歌う人がいたらおかしいですよね? ということです。
トオル…なるほど、やっぱり僕は野球の説明が一番しっくりきます(笑)。
シズカ…私は、「いいことも書いてあるんだ」と思っていたけど、「大日本帝国のため」という目的だったら確かにおかしいし、教育現場に持ち込むのはやっぱり変ですよね。
(第二回につづく)※「BEST T!MES」にて5月13日(土)6:30公開予定です
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