七夕に「運命の人」と出会っちゃうウッソみたいなホントの話。後編【女子鉄ひとりたび】5番線
鉄道には夢がある。いや夢しかない。この赤い糸が、あなたにつながりますように。~裕子~
■悩む私の背中を押してくれたひとこと
八幡を巡り、京阪の駅まで送っていただく。
たった数時間前まで他人だったのに、ずっと前から知り合いだったかのように、距離が近くなった。
そこでポロッと、このとき悩んでいたことを口に出してしまった。
実はこの時期、「鉄道アイドル」を名乗る女性がどんどん出てきていた。鉄道界に女性が増えると、華やかになるし、嬉しい気持ちもあった。けれども、女の世界とはドロドロしていて怖いものである。もともと一匹狼の私は、そのコミュニティーで上手くやっていけずに悩んでいた。
「実は、同業ライバルの女の子たちと仲良くしなきゃと思いつつもできなくて……」
すると、さっきまでニコニコと穏やかだった辻さんの表情が鋭くなり、意外な言葉が返ってきた。
「芸能界のような生存競争の激しい世界で、仲良くなんて無理やわ。野球選手でもレギュラーがケガしたら、ベンチにいる選手たちは内心喜んでるんやで。姉ちゃん優しすぎ! ライバルなんか蹴落としてなんぼや!」
そのストレートすぎる辻さんの温かい喝に、心の中の氷がじわじわと溶け出していくような気分になった。
その通りだ。
私は「良い子でいなきゃ。誰とでも仲良くしなければ」と自分の本音を偽りながら、演技をしていただけだ。もっと、自分の気持ちに正直に生きてもいいんじゃないか? 無理に仲良くする必要はないし、嫌いな人は嫌いなままでいい。我慢しすぎる必要は、最初からなかったんだ。
短い言葉ながらも、私の心にグサッと刺さった。すると急に激しい雨が降り出した。それと同時に、私の目からも涙があふれた。これまでのことが洗い流されていくように思える。辻さんは、あれこれ言わずに、そっと私に寄り添ってくれた。その気遣いが嬉しかった。
この言葉を受けたあと、同業ライバルの女の子たちと仲良くするのをやめた。周りからは色々言われたが、自分の本心を守ったことで、自信が持てるようになったのは間違いない。
するとそれを見ていたある女の子から、「実は私も他の子と上手くやっていけなかった」と相談されて、意気投合し、仲良くなってしまった。
その数年後には、距離を置いた子たちとも「あのころは大変だったよね。お互い必死だったね」と、笑いながら話せるようになった。人目を気にして立ち振る舞うより、人に嫌われてもいいやと我を通した方が上手くいく。そんなことを教えてもらった出来事だ。
あれから年に一度、七夕の日になると、辻さんから電話がかかってくる。
「もしもし、俺の織姫ちゃん? 元気〜? 彦星だよ!」
(六番線へ続く)
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■「女子鉄ひとりたび」出版記念イベント・レポート【その②】
初の本格的な紀行本の発売を記念して、東京・大阪のなんと二カ所!で、豪気にイベントを開催した。
(写真は大阪会場)
開催:東京 2019年12月28日 八重洲ブックセンター本店 8Fイベント会場
大阪 2020年1月13日 旭屋書店なんばCITY店 特設イベントスペース
東京会場では、年末にもかかわらず大盛況! 大成功を収めた木村さんであるが、大阪会場は果たして?
会場のお客さんの顔を見るまでは、ドキがムネムネ。
旭屋書店なんばCITY店の特設イベントスペースには、木村さんの登場はまだかまだかと待ちわびたファンが、開催時間を前に長い行列を作っていた。
■水間鉄道に「女子鉄ひとりたび」ヘッドマーク電車が走った!
掲出日程:2020年1月11日~1月20日(10日間)
掲出車両:1003(青ライン/貝塚駅側)
走行日:1月15、16、18、19、20日