歴史と文化が紡ぐ「ストーリー」に出会う【日本遺産】の魅力〈近日公開〉
日本国内の魅力を再発見する「日本遺産を旅する」連載が近日スタート!
日本各地で、今もそこに住む人たちの誇りとともに継承されてきた<文化と歴史>。まったく新しい<ストーリー>としての文化財の形。地域の歴史と誇りをストーリーとして活用すべく2015年から始まった「日本遺産」をご存知だろうか。景観、食、工芸、芸能、思想 etc…、雑誌『一個人』が現地取材を実施したユニークで魅力的なストーリーを改めてお届けしたい。
《文化財は保存から活用の時代へ》
新たな視点で地域の魅力を見直す「日本遺産」の認定制度
2015年4月に「日本遺産」18件が文化庁から認定されたが、「日本遺産」が従来の国宝やユネスコの世界遺産と異なるのは、各地の歴史的魅力や特色を「ストーリー」としてアピールする点だ。
たとえば《近世日本の教育遺産群―学ぶ心・礼節の本源―》という「日本遺産」はひとつの地域ではなく、茨城県水戸市、栃木県足利市、岡山県備前市、大分県日田市という4県4市にまたがっており、近世日本、とくに江戸時代の各藩の学校に着目した「ストーリー」を構成した結果「日本遺産」に認定された。
具体的には徳川斉昭の創始した旧弘道館(水戸市・国特別史跡)、現存最古の学校・足利学校跡(足利市・国史跡)、岡山藩初代藩主・池田光政が創った旧閑谷(しずたに)学校(備前市・国特別史跡)、江戸時代最大の私塾だった広瀬淡窓(ひろせたんそう)の咸宜園(かんぎえん)跡(日田市・国史跡)などを関連付けている。つまり、これまで《点》だった有形・無形の文化財を、エリアを超えた《シリアル=ひと続きの》として再評価することもできるのである。
2020年の今、新型コロナウイルス感染拡大により外出自粛等の影響で観光需要が低迷し、地域の産業に対して甚大な被害が出ているのはご存知のとおり。新型コロナの危険性が完全に消滅したわけではないものの、5月末には緊急事態宣言も解除になり、6月19日からは都道府県をまたぐ移動の自粛も緩和された。政府は今後、情勢を見ながら日本国内における人の流れと街の賑わいを創り出し、地域を再活性化するための対策として「Go Toキャンペーン」を実施する予定だ(7月17日現在)。
コロナ禍により“新しい生活”を模索する中、そのひとつとして我が日本国内を再度見つめ直す、そして日本独自の文化や財産を再発見するというスタイルが構築されていくはずである。そこで、地方創生という観点からも、この機会に「日本遺産」が紡ぐ物語に触れてみてはいかがだろうか。
そのガイドとして、「日本遺産を旅する」と題し、日本遺産として認定された地域の魅力を紹介していく。