小野政次役・高橋一生「自分を器用だとは感じていません。周りの人たちに役を作ってもらっています」
大河ドラマ「おんな城主 直虎」特別インタビュー
大河ドラマ「おんな城主 直虎」で極めて難しい役に挑戦している高橋一生に聞く(『歴史人』2017年6月号より)。
政次はどんな人間なのかは
十人十色の解釈でいい
井伊直虎とは幼なじみの間柄で、井伊の家老でありながら、今川家から目付役を任されている小野政次。難しい立場に置かれている中「敵か味方かわからない」役柄を高橋一生が好演している。
――政次は井伊家の裏切り者なのか否かと注目が集まっています。
「第12話(3月26日放送)で、印象的な言葉が3回も出てきました。『選ぶ余地などない』と。これってとても深いセリフでした。誰もが家だったり、愛する者だったり、何かを守ろうとしています。いろんな人の見地に立つと、物事は善悪だけでは決められないし、立場によって選ぶ余地がない状況に追い込まれることもある。どの見地から見ると裏切りなのか。それぞれの人物を深く描ける大河ドラマだからこそ、いろんな見方ができると思います。そんななか、政次は自分の胸にある思いと剥離しないように、裏表を使い分けなければいけない」
――政次という役柄について、どのように思われていますか?
「以前、大河ドラマ『軍師官兵衛』で、井上九郎右衛門という役を演じさせていただいたのですが、その時に心に残っていたセリフがありました。“内に秘めたるものだ”という言葉です。政次は、この言葉をより密度の濃いかたちで観て下さっている方に感じていただくことのできる役だと思っています。時を経て、九郎右衛門からバトンを渡してもらったような気がしています。政次の“内に秘めたるもの”を、いかに言語化せずただそこに居るだけで、観て下さっている人に伝わるかということを試させていただいているようです。その“秘めたるもの”の感じ方は人それぞれで、“政次がどんな人間なのか”は、十人十色の解釈でいいのではないでしょうか。観て下さった方がどのように感じたのか、できれば聞いてまわりたいくらいです(笑)」
出演作ごとに演じる役柄が異なり、その都度、見事に演じきっている高橋。今回の政次役もハマり役との評価も高い。
――直虎の苦労する気持ちが骨身にしみてわかると?
「そうですね。直虎さんも “さて何をすればいいのじゃ”と周りに聞いてしまうところから始まる。一から教えてくれる世話係がいるわけでもないし、模索しながら少しずつ構築していくので、私自身も何かを決めなければいけないとか、自分の役割を無理に決めつけず、まずは、みんなのテンションを高めて楽しくやれることを先導できればいいのかなと思っています」
――政次のキャラと高橋さんのイメージが似ているとの声もあります。
「取材で『器用ですね』といってくださることがあるのですが、自分では器用と感じていなくて。いきなり誰かの人柄にジャンプできないから、周りの皆さんに役を作っていただいていると思っています。今回なら、柴咲(コウ)さんや井伊家、今川家の皆さんからお芝居を振られると返していく。その繰り返しを高橋一生と政次が重なると感じていただけるのは、もしかしたら(芝居は)成功なのかもしれません」
(『歴史人』2017年6月号より)