「裏返して見たくなる靴って、あまりないですよね」
〈ボナム〉の貴重なデッドストック生地を駆使したスニーカーのコト
モノ・ト・コト【第2回】ベイクルーズ プレス・青木志門が選ぶブランド&アイテムをピックアップ!
“靴底“から考えるオンリーワンデザイン
青木 個人的に気になっていたのですが、〈ミソグラフィー〉のシューズはソールとアッパーの組み合わせが独特ですよね。型を起こされる際、アッパーとソール、どちらから考えているんですか?
宮城 最初はソールを選んでから考えることが多いですね。ソールを見ると、ラスト(靴の木型)が見えてきます。ビブラム®社の本社に行くと驚くほどたくさんの種類があるんですが、自分の中にあるラストのイメージと合うソールを選び出して、デザインするようにしています。
青木 なるほど。アッパーのデザインももちろん素晴らしいんですが、宮城さんの展示会で実際にシューズを手に取って思うのが「裏返してソールまで見たくなる靴ってあまりないな」ということなんです。他のシューズブランドでもビブラム®ソールを使っているところは多くありますが、詳しく話を聞いてみたくなるソールを使っているところは意外と少ない。あえて、日本では見かけないソールを使おう、というのは意識されているんですか?
宮城 靴を作る上で、「この靴を履くことを楽しんでほしい」と思っています。〈ミソグラフィー〉の靴に奇抜なデザインが多いのも、その考え方から。普通のシューズを作っても、「このブランドが求められているのはそこじゃない」と考えてしまう。だから、ソールも見慣れたものではなく、皆さんから見て新しい! と感じてもらえるものを探しています。今回の〈ボナム〉とのコラボスニーカーにも、いわゆるハイテクソールと呼ばれる3種類の素材を用いた珍しいビブラム®ソールを使用しています。
宮城 見ていただくと分かりますが、黒くて堅いTPU素材、ラバー、白いEVA素材を組み合わせて作られています。特に面白いのが、TPU素材。革靴の話になりますが、いい靴って安定感があるとか、疲れないとか言われますよね? 革靴のソールには「シャンク」と呼ばれる鉄の棒が入っています。これが歩行時に足の裏を固定し、歩行をサポートしてくれるんです。今回のビブラム®ソールでは、そのシャンクの代わりをTPU素材がしてくれている。だから、長時間履いてもストレスのないスニーカーになっているんです。
青木 ビブラム®社には、山用、街用など用途も多岐にわたっていて、その中にもまたたくさんのソールがある。ホントよくぞ見つけてきてくれました! って感じがしますよね。実は〈ボナム〉からも〈ミソグラフィー〉さんには生地を提供させていただいているんですが、それらは古布やデッドストックなど、古いものが多い。それらとこのようなハイテクソールとの組み合わせを見ていると、温故知新といいますか、新鮮に見えますよね。生地を理解して上手く昇華していて、純粋に面白いなって思ってしまいます。
宮城 ビブラム®ってすごいんですよ。毎日ソールの配合を研究していて、同じデザインのソールでも素材の配合を数パーセント変えるだけで雨の日でも全く滑らないソールになったりする。明日以降、またビブラム®の方にお邪魔しようと思っているのですが、今から楽しみで仕方ありません。