遊園地の割高料金はどこまで許される?
【法律歳時記】夏旅のプランニング前に知っておきたい法律(2)
一方で、開園直後は「飲食物持ち込み禁止」などの規約が、園内でのフードの料金の高さとあいまって、ネットで話題にもなりました。このような「規約」は、法的にはどのように考えられているのでしょうか。
アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に伺いました。
テーマパークの飲食料金が割高なワケ
テーマパークなどの規約に、「飲食物持ち込み禁止」のキーワードがはっていることがあります。このように、お客さんの行動を制限するような規約は、法的に問題ないのでしょうか?
「一般的に、このような規約には、合理的理由があれば法的に問題ないと考えられていて、法的拘束力があるとされています。
テーマパーク等の娯楽施設にはそれぞれの雰囲気があり、お客様に満足してもらうためにも、雰囲気を維持する必要があります。その際、多数のお客様から無制限に飲食物などが持ち込まれると、ゴミ清掃の問題が生じますし、各娯楽施設としては、一定の場所で飲食をしてもらうことには、合理的理由があると考えられます。したがって、このような規約には基本的には従わなければなりません。
多くの方は、ホームページや約款を隅々まで確認されないと思います。ただ、ホームページ等に掲載している以上、一般的には、『掲載内容に納得してもらったうえで来場した』と判断されることになります」
そのテーマパークで遊びたい以上、規約には従わなくてはいけないのですね。
ところで、持ち込み禁止となると、園内で購入するしかないと思うのですが、どんなテーマパークでも基本的に割高だと思うんです。高いものを無理やり買わせるのは詐欺じゃないんですか?
「一般的には、多少割高だとしても契約は有効と考えられており、詐欺に当たりません。公序良俗に反するくらい高い場合は問題になる場合もあるでしょうが、通常は、適切な範囲内での料金設定になっていることが多いので、問題になることは少ないでしょう。
各娯楽施設は、園内の飲食代の収支も含めて入園料を設定しています。『持ち込み制限もされたうえに園内の飲食代が高い』と納得いかない気持ちも理解できますが、それらの飲食物の値段も入園料の一部だと割り切って楽しんだほうがいいかもしれませんね」
どんな規約でも認められるわけではない
規約には法的拘束力があり、基本的に従わなければならないことは判りました。では、規約に書いてさえいればなんでもOKになるんでしょうか。
「『園内で何があっても一切責任を負いません』というような規約も、よく見かけます。『食物持ち込み禁止』のように、規約にこのように記載してあれば何が起きても運営側は責任を負わなくていいのかというと、そういうわけではありません。
一般的には、規約に『一切責任を負わない』と記載していても、場合によってはその規約が無効になると考えられています。ただ、『必ず責任を負う』という訳ではないので、注意が必要です。損害の発生に関して園に責任がないような場合は、法的責任を追及できないことが多いでしょう。もっとも、『事業者に故意または過失があっても一切損害賠償責任を負わない』や『事業者に責めに帰すべき事由があっても一切損害賠償責任を負わない』などの規約は無効となるでしょう」
規約に合理的な理由があれば従わなければならず、そうでない場合には無効になるということですね。
「各娯楽施設は、飲食物を持込めなかったり、施設内の飲食代が高かったりすることはよくあることです。それらの料金を事前に正確に把握したいという方は、電話やホームページで確認する必要があります。その結果『どうしても納得できない』と思ったのであれば行かなければよいだけです。不自由な決まりに納得できないこともありますが、契約自由の原則とはそういうものなのです。
娯楽施設に遊びに行くときは、金銭的に割り切って思い出を作りに行った方が、人生楽しくなるかもしれませんね」
【お話をうかがった方】
岩沙 好幸(いわさ よしゆき)さん
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物好きでフクロウを飼育中。
近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
『弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。