死亡保険より、就業不能保険を押さえておくべし。出口治明氏が教えてくれた「本当に必要な保険」
出口治明さん5月毎日更新 Q.26 これからの時代、特にオススメの保険はありますか?
共働き文化に移行する現代の日本社会に最適な保険
保険は、自分の好みや目的にあった商品を選ぶことが基本です。ただ、僕がオススメしたいのは、自力では避けようがない万が一のリスクに、最小限のコストで対応するための保険ですね。要するにレバレッジの高い商品です。
具体的に言えば、死亡保険や就業不能保険などが該当しますが、今後は、死亡保険よりも、就業不能保険のニーズが高まっていくと思います。
その背景には社会状況の変化があります。
戦後の日本において、死亡保険は世界的に見ても異常によく売れた商品でした。
長時間労働を前提とする工場モデルの中で専業主婦層が増大し、稼ぎのない主婦の多くが、大黒柱である夫に万が一のことがあったときに備えて、死亡保険をかけたことが最大の理由です。
それによって、保険業界が急激に成長し、日本はアメリカに次ぐ世界第2の保険大国になったのです。
ところが、厚生労働省のデータによると1995年の平均所得が467万円で、2015年のそれが420万円ですから、この20年間で一世帯あたりの平均所得はなんと約50万円も減少しています。
現代の日本は、夫婦どちらかの収入だけで家族全員を養っていくことが難しくなり、専業主婦(もしくは主夫)になろうと思っても、なかなかなることができない時代を迎えています。
つまり、高度成長を前提とした専業主婦時代から、人類の歴史の中ではごく当たり前の共働き時代へと移行しつつあるのです。
そう考えると、死亡保険よりも、働けなくなったときに生活費を保障してくれる就業不能保険のニーズが高まるのは必然ではないでしょうか。
なぜなら共働きの場合、どちらか一方が病気やケガなどで働けなくなるとその人の収入が減るだけでなく、その介護のためにパートナーが仕事量を減らしたりすると、その分も収入が減ることになります。
場合によっては、何年も働けなくなることもあるでしょう。会社を辞めざるを得なくなり、公的保障や貯蓄があったとしても、それだけではどうにもならない状況に陥る可能性もあるかもしれません。
そんなときの備えとしては、就業不能保険がピッタリです。
働けるように身体が回復するまで、月々もらっていた給与のように、保険会社から毎月給付金を受け取ることができますからね。
この保険は、共働き世帯はもちろん、一人暮らしの独身者にも適しています。
ときどき、独身にも関わらず、ご自身に多額の死亡保険を掛けている若い人に出会いますが、僕はそれほどの必要性がないと思います。
扶養家族がいないことを考えれば、自分が死んだあとのことをあまり気にする必要はありません。自分一人が生活できればいいわけですから、まずは就業不能保険から検討すべきだと思います。
また、これからの時代は給与が下がる可能性も高いため、固定費である生命保険料は手取りの3~5パーセント程度に抑えて、その範囲内で必要な保障を選んでいくのがいいと思います。