【緊急報道】「国家安全法」で香港はどうなる!? 超厳戒体制下のデモ最前線で見た混乱の極み |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【緊急報道】「国家安全法」で香港はどうなる!? 超厳戒体制下のデモ最前線で見た混乱の極み

顔面を胡椒スプレーが直撃!記者が見た国家暴力の真実

◼︎香港は一国一制度に飲み込まれていくのか

警察により胡椒スプレーを浴びせられる記者(©香港アップルデイリーより)

 地下鉄で旺角に向かい今日のデモにも参加していた知り合いのレックス氏と合流する。彼は50代の男性で香港のニュース雑誌の元編集長で、長年デモに参加してきている。ローカルのカフェに入ると、彼は携帯を取り出し「ニュースで見たよ、大変だったね」と、香港メディアのネットニュースを見せてくれた。そこには警察の胡椒スプレーの直撃を受けた自分の写真が映っており、冷汗ものである。

 香港国安法が施行されて翌日の今日のデモには約1万人が参加したと報道されている。レックス氏いわく、

「すでに平和的なデモでも警察が許可を与えず、昨年のように100万人、200万人の市民が参加する大規模なデモを行なうのはもはや難しいだろう。しかもデモ会場には大量の武装警察が厳戒体制を引き、集会制限法と国家安全法の違反を理由に、いくらでもデモ参加者を逮捕できるようになったからね。だからと言って香港人がデモを止めるかと言えばノーだ。100年に及ぶイギリスの統治下で教育を受け、自由と民主主義はすでに香港人の血となり、DNAに刻み込まれている。だからその権利が奪われそうな時には、声を上げて抗議を続ける。これは法律で決まったら不満があっても黙って受け入れる日本人の気質とは違うだろうね」

 と、笑う。さらには、

「このデモは後1年くらいは続くでしょう。すでにアメリカとEU各国が、中国の強引な香港国安法の導入に、制裁を開始している。アメリカはすでに香港に対する優遇政策を撤廃し、香港への防衛装備品輸出の終了などを表明している。さらには香港の民主と自治を毀損した香港、中国高官の入国拒否や資産凍結も示唆しています。

 イギリスも約300万人の香港市民にイギリス海外市民(BNO)パスポートを申請可能とし5年間の居住権を認めると発表している。この制裁は中国政府への大きな打撃になります。これら各国からの香港へのサポートを引き出すためには香港人がデモを続け、我々はまだ諦めていないと示し続けていくしかないのです。ここで諦めたら各国からサポートも無くなり、香港は本当に中国に飲み込まれ、中国のただの地方都市となるでしょう」と、予想する。

 アメリカは軍事転用などを防ぐために、中国への高度技術部品の直接輸出を禁止している。しかし多くの中国企業は香港に子会社を設立し、そこを受け皿にしてアメリカの高度技術部品などの調達を行なってきた。特に香港と隣接する深圳市にはファーウェイなどの通信・IT系企業が集中し、中国のシリコンバレーと呼ばれている。これらの先端分野を始め、その部品調達ルートを閉ざされることとなるのだ。

◼︎香港の民主運動は壊滅したのか?

 香港国安法の施行を前にした630日、香港の民主派団体「デモシスト(香港衆志)」の中心メンバーであるジョシュア・ウォン、ネイサン・ロウ、アグネス・チョウが脱退を表明。さらに数時間後には、組織の解散も発表した。「香港独立」を掲げるその他の政治団体も次々と解散を発表している。海外メディアは香港国安法により、すでに香港の民主運動は壊滅したと、報じている。

 しかしレックス氏はこれを否定しBe waterだよ」、と答える。これはブルース・リーの「友よ、水になれ ( Be water, my friend )」という言葉から引用され、今回のデモの合言葉にもなっている。 
 「水の流れのように型にはまらずに、柔軟であれ」と説明され、困難に直面したときは形式にとらわれず臨機応変に対応しよう、という意味などが込められている。昨年の香港デモでも大通りを埋め尽くしていた数十万人のデモ隊が武装警察が現れるとあっという間にいなくなり、別の場所に移動し抗議を続け、危険が及べばまた流れる水のように消え去っていく場面が何度も見られた。

 「民主派の活動家たちは国家安全法で捕まれば、最高で無期懲役刑に課せられる危険があり、全てが終わりになり、命の危険さえある。だからデモ隊と同じように、時には撤退し、生き延び、時機を待つ。中国共産党という巨大な力の前に正面対決して討ち死にするだけが、戦いではない。今回のデモでも『各自の方法で山に登れ』と、いうスローガンがある。すでに国際的に知られた彼らは、個人として国内外に向けて発信をし香港のデモと民主化をサポートし続けていくでしょう」

ビクトリア湾に立つブルース・リーの銅像。今も彼は香港市民の尊敬を集めている

◼︎この街をメチャクチャ愛する香港人のデモは続いていく

 今年の9月には香港の立法会選挙が実施される。民主派はこの選挙で過半数を獲得し、デモ隊の要求する真の普通選挙の実現などの五つの要求を香港政府に呑ませることを大きな目標としてきた。しかし香港国安法を支持し、従わなければ、立候補資格を剥奪され失格(DQ)とされる恐れがある。中央政府は民主派候補にDQを連発し、彼らが過半数を獲るのをなりふり構わず阻止してくると予想される。しかしと、レックス氏は

「もし中央政府が彼らのDQを連発したならば、アメリカは民主主義への重大な挑戦、としてさらなる制裁措置を実施し中国共産党を追い詰めるでしょう。昨年、香港デモが発生した頃、アメリカはまだ中国を重要な貿易相手国として容認していた。しかし世界中にコロナ禍が拡大し、中国政府の無責任で挑戦的な対応、それに加え香港国安法の強引な導入で、アメリカは完全に中国を民主主義を侵害する敵とみなしました。これからは全力で中国を潰しにかかるでしょう」と、言う。

 この日のデモでは370人の逮捕者が出て、その中の10人は「香港独立」と書かれた旗を持っていたなどの罪で香港国安法に問われた。

 香港国安法により、香港の民主主義を巡る状況は悪化する一方で、このままデモも押しつぶされていくようにも見える。しかしこの日、「香港独立」と叫び逮捕されないよう、代わりにデモ隊が掲げていたのが「我哋真係好撚鍾意香港」と広東語で書かれた横断幕だ。レックス氏にこの意味を尋ねると

I really fucking love HK 俺たちは本当に香港がメチャクチャ好きなんだ」

と、答えた。

「俺たちは本当に香港がメチャクチャ好きなんだ」と書かれた横断幕を持つデモ隊。(©香港メディア:明報より)

 今日のデモでも「香港は香港人の香港だ!(香港是香港人的香港!)」と、叫ぶ若者たちの姿が見られた。デモの現場にいた20代の若者に「香港国安法が出たけどデモを続けるの?」と、尋ねると、「もちろんこれからもデモに参加する。僕たちにはデモや自由に発言する権利がある。法律で心までは縛れないよ」と、答えてくれた。外からはただただ巨大な力に踏み潰されそうに見える香港デモだが、「香港の未来は自分たちが決める」という血とDNAを刻み込まれ、この生まれた街をメチャクチャ愛する香港人の戦いは、粘り強く続いていくだろう。

 

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