島根「鯖街道」の町・雲南で こだわりの名人が焼く、ブラック&ゴールドな絶品「焼き鯖」
〈サバジェンヌの 日本全国ごちそうサバです!①〉
山陰地方はサバ食文化が豊かなエリア。島根は統計によると一世帯あたり日本一のサバ消費県。ブランド化はされていないものの、美味しいサバが水揚げされている。そしてなんといっても注目すべきは、島根の「サバ郷土料理」!地域に根差した料理がじつにバラエティー豊か。県内各地でその場所ならではのサバ料理が満喫できるという、さばファン垂涎の地なのだ。しかもサバ料理は海側だけではなく山間部でも楽しめる。今回は島根県の「山さばグルメ」をご紹介!
県東部に位置し中国山地にほど近い、山間部の雲南(うんなん)市。まわりを見ても山、山、山のこの町を代表す名物は「焼き鯖」。サバをまるごと1本串に刺して焼き上げた豪快な一品だ。だからといって、ハレの料理なわけではない。
「おかずとしてよく食べますね。昨日も食べました」と雲南市役所の加藤雄二さん。いたって当たり前、というリアクションである。なおかつ、雲南では焼き鯖=「串に刺さった鯖」らしい。なにせ「市外で焼き鯖が切り身だったことに衝撃を受けた」という人がいるほどで、雲南市民にとって「鯖と串」はワンセット。実際、地元スーパーでも串に刺さった焼き鯖が、ごく普通に売り場を埋め尽くしている。なおかつ、この「串はサバの恋人」状態は、島根県内でも「雲南だけ」の局地的な光景らしい。
なにゆえ、山の中で鯖なのか? それはかつての流通事情にある。市内の木次(きすき)、三刀屋(みとや)地区は、出雲地方と広島を結ぶ、交通の要衝として栄えてきた。日本海沖で水揚げされたサバもこの道を運ばれたが、さすがにここ、奥出雲のあたりが生魚の限界点。そこで商人たちが、保存のために焼き鯖にしてさらに奥地へ、そして広島方面まで運んでいったらしい。鯖の道といえば、福井県若狭地方から京都へと向かう「鯖街道」で知られているが、島根にも「鯖街道」があったのだ。
かくして雲南の郷土料理として定着した「焼き鯖」。鮮魚店で販売されるのがスタンダードだったが、「最近はお魚屋さんが減ったので」(加藤さん)販売する店が減っているらしい。
そんななか、焼き鯖ひとすじ33年を誇るのが三刀屋地区にある「藤原鮮魚店」。その名の通り、もともとは「鮮魚店」だったが、いまや、潔く「焼き鯖1本」で勝負。