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自力解決か、プロに頼るか。相続問題を弁護士に依頼するメリットとは?

法律のプロが教える、相続と遺言の豆知識 第3回

弁護士は状況を見極めて
依頼者の利益の最大化をはかる

 ところで調停手続きを利用する場合は、モメている相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てます。どこの裁判所で係属するかは重要なことで、最寄りの家庭裁判所に申し立てることができればベストです。そこで、実質的には対立していない相続人を相手方として調停を起こし、実質的に対立している相続人も一緒にまとめて最寄りの家庭裁判所に申し立てるテクニックがあります。ただし審判の場合は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てることと決められてます。
 佐賀出身で東京に在住する相談者のケースです。実家の父が他界し、父と同居していた兄が財産を独占しようとしているとのこと。
 調停は、兄の住所地である、佐賀の裁判所で起こすことになります。審判もやはり、被相続人の最後の住所である、佐賀の裁判所で起こすしかない。相談者は仕事をしていて、毎月1回の調停に自ら出席することは現実的ではありません。実家近くの弁護士に依頼すれば交通費などの問題は生じません。しかし、東京の弁護士と違い、すぐに会って相談できるわけではない。実家近くの弁護士に知り合いはいない、ということでした。

 このような場合、相談者は、調停のたびに東京から佐賀の裁判所まで通わなくてはならないのでしょうか。
 実は、どこの裁判所で訴えるかという問題は、以前に比べて解決されつつあります。平成25年1月に、家事事件手続法が施行され、当事者が遠隔の地に居住しているときなどには、テレビ会議や電話会議でも調停や審判が進められるようになったのです。調停や審判は、これまでよりも使いやすい制度になったといえます。
 とはいえ、調停はあくまでも相続人全員の合意が必須なので、合意が期待できない相手方との紛争解決には適しません。中には、初回から調停期日に出頭しない相続人もいます。他方、審判では不動産の売却を最終的に競売で行うため、相場価格よりも低い値段で不動産が換金されるリスクがあります。
 弁護士を立てれば、調停や審判の各段階における状況を見極めて、依頼者の利益の最大化を図りますので、ある程度納得のいく遺産分割が期待できます。

次のページそもそも、相続のもめごとはスムーズに解決しないものだと知っておくべし

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長谷川 裕雅

はせがわ ひろまさ

東京永田町法律事務所代表。弁護士・税理士。早稲田大学政治経済学部を卒業後、朝日新聞社に入社。記者として多くの事件を取材する。その後、一念発起して弁護士へ転身。弁護士・税理士として争族と相続税をトータルに解決できる数少ない専門家として、相談者から絶大な信頼を集めている。主な著書に『磯野家の相続』(すばる舎)、『波平は「相続」であわてない! 磯野家に学ぶ33ヶ条』(文藝春秋)、『相続で泣きたくなければ不動産のしくみを知りなさい!』(PHP文庫)、『なぜ酔った女性を口説くのは「非常に危険」なのか?』(プレジデント社)などがある。


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