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遺言はラブレターのつもりで書きましょう

法律のプロが教える、相続と遺言の豆知識 第1回

相手に届いて初めて意味をなすもの

 最後にもっとも重要なのが、遺言は相手に届かなければならないということです。書きかけのラブレターを破って捨てた。歌詞に出てきそうで、青春の思い出としては良いのですが、やはり本来は相手にしっかりと届けられて初めて意味を持つものですよね。遺言も、書いたままで誰にも読まれずに終わったのでは、意味がありません。
 注意したいのが保管場所です。簡単に見つかってしまうのはマズい。自分に不利な内容の遺言を発見した相続人によって、闇に葬り去られてしまう可能性があるからです。かといって、あまりにも見つかりにくい場所に遺言を保管するのも不適切です。人の目に触れなければ、遺言を書いた意味がなくなってしまいます。
 そして、最低限の形式は整えましょう。いくら感情の発露といっても、ラブレターにもルールがあります。署名が無ければ誰からの告白かわかりません。匿名のラブレターが下駄箱に入っていても返事は書けません。
 日付も重要です。遺言は何回でも書き直しができるので、複数の遺言を作成した場合、内容に矛盾が生じる可能性があります。矛盾した内容については新しいものが優先するのですが、遺言の新旧を判断するためにも作成日付が必須なのです。
 自筆証書遺言の場合は、全文が自筆であることが必要です。遺言に添付する財産目録も含めてすべて自筆で。ワープロ打ちはNGです。ラブレターも、遺言も、相手の心に確実に届くためには必ず自筆でお願いします。
<『相続の抜け穴 遺言の落とし穴』(長谷川裕雅)より抜粋>

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長谷川 裕雅

はせがわ ひろまさ

東京永田町法律事務所代表。弁護士・税理士。早稲田大学政治経済学部を卒業後、朝日新聞社に入社。記者として多くの事件を取材する。その後、一念発起して弁護士へ転身。弁護士・税理士として争族と相続税をトータルに解決できる数少ない専門家として、相談者から絶大な信頼を集めている。主な著書に『磯野家の相続』(すばる舎)、『波平は「相続」であわてない! 磯野家に学ぶ33ヶ条』(文藝春秋)、『相続で泣きたくなければ不動産のしくみを知りなさい!』(PHP文庫)、『なぜ酔った女性を口説くのは「非常に危険」なのか?』(プレジデント社)などがある。


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  • 長谷川 裕雅
  • 2014.04.16