今さら聞けない、尿管、尿道、膀胱、前立腺。
ここが気になる人体の機能④
尿道と前立腺の構造
膀胱から出た尿は、尿道を通って外尿道口から排泄される。ただし、ひと言に尿道といっても、形態や機能が男女で異なる。それは生殖器の違いからも想像に難くない。
男性の尿道は、直径が約10㎜、長さは15〜20㎝あり、前立腺部・模様部(隔膜部)・海綿体部(陰茎部)に分けられる。その経路は横から見るとS字状で、内尿道口から前立腺内、陰茎の尿道海綿体を経て、亀頭の先端にある外尿道口へと至る。
なお、尿道内側は粘膜に覆われていて、もし細菌が侵入してきても細菌は粘膜にからめとられて、尿といっしょに流し出されるしくみになっている。ただし、免疫力が落ちているときなどは感染の可能性が高まる。
また、男性の尿道には、尿を排泄する泌尿器としてだけでなく、射精時に精子を運ぶ精路(生殖器)という一面もある。
いっぽうで女性の尿道は、直径は10㎜強と男性よりやや太いが、長さは2.5〜4.5㎝と短く直線的だ。こうした形状から、細菌感染による尿路感染症を起こしやすい。
男性にだけある付属生殖腺(内性器)が前立腺だ。前立腺は、恥骨の後面、膀胱頸部の直下にあり、尿道をぐるりと取り囲んでいる。思春期以降に大きくなり、青年期ではクルミ大、重さは15〜20gほど。表面はしっかりとした皮膜に覆われている。前立腺の後ろ側には、精囊液(せいのうえき)をつくる長さ5㎝ほどの精囊、前立腺に入る精管の末端部で袋状に膨らんでいる精管膨大部があり、これらは互いの開口部で合流して射精管となっている。
そして、前立腺のおもな機能は前立腺液の分泌だ。これは、クエン酸や亜鉛、リン化合物などを含む弱アルカリ性の乳白色をした液体で、精囊液とともに精液の15〜30%を占めている。前立腺液のくわしい生理機能はわかっていないが、射精時にはこれが精囊液とともに分泌され、精子を活性化している。
加齢を主因として、中高年男性に起こるのが前立腺肥大症だ。おもな症状として、前立腺(の内側に位置する前立腺移行領域)が肥大することによる尿道圧迫(機械的閉塞)、前立腺や膀胱頸部の平滑筋が過剰に緊張・収縮することで生じる機能的閉塞による尿道圧迫、残尿感、頻尿、排尿困難(尿の出が悪くなる)、尿が出る勢いの低下など、排尿に関するトラブルに見舞われる。薬物療法が基本で場合によっては手術となる。
〈『人体解剖図鑑(ヴィジアル新書)』より構成〉
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