分かっていても止められない。C・ロナウドの″ワンタッチシュート” |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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分かっていても止められない。C・ロナウドの″ワンタッチシュート”

DF目線からストライカーの動きを読む

■ペナルティエリアにあって、ペナルティエリアにないもの

 大袈裟に言えば、ペナルティーエリアで行われるサッカーとは、それ以外のエリアで行われるサッカーとは別のものだと言えます。
 
 ペナルティーエリアには時間もスペースもありません。ほんの少しのコントロールのズレも、ほんの少しの判断の迷いも許されません。
 その代わり、ゴールはすぐそこにあります。ほんの少しでもボールに触ることができ、そして、ゴールの枠の中で相手選手がいないところにボールを飛ばすことができれば得点になります。

 そのことからシンプルに考えれば、ペナルティーエリア内で「ワンタッチゴールを狙う」というのは、「ボールが飛んできた時点では相手選手のマークを外しておき、シュートコースに相手選手がいない状態でボールを受け、そしてワンタッチでシュートを打てる体勢をとる」、ということになります。

 クリスティアーノ・ロナウドはそれをひたすらやり続けています。つまり、相手のマークを外してボールを呼び込んでいます。
 得点した2つのシーンはまさにそうした得点でした。

 1点目は、下がらざるをえない(センターバックの)キエッリーニと離れるように動き、そしてほんの少しステップを調整してすることでサイドネットへのシュートコースを切ろうとしていたもうひとりのセンターバックのボヌッチからも少しズレるようにポジションをとりました。

 2点目は、モドリッチが抜け出したときにキエッリーニの背後にポジションをとり、キエッリーニが首を振ってクリスティアーノ・ロナウドのポジションを一度確認した後、ボールに目線を戻したときに動きを変えました。
 キエッリーニが下がればマイナスにポジションをとり、キエッリーニがマイナスをケアすれば前に走り出す。相手によって動きを変えているので、センターバックからしたらどうしようもありません。

 クリスティアーノ・ロナウドは、この2得点のシーン以外でも何度もこうした動きを繰り返していました。

 大事なのは、ボールを呼び込むときのポジショニングとタイミングです。クリスティアーノ・ロナウドは忠実に、かつ的確に、相手選手がマークできないポジションからタイミングよく動き出しています。
 そこにあの速さと強さを持ち合わせているのですから、水物と言われる得点をいとも簡単に決めてしまっているのも当然なのかもしれません。

 面白いのは、あのドリブラーだったクリスティアーノ・ロナウドが、そのポジショニングとタイミングを完璧にマスターしていることです。このポジショニングとタイミングはコンスタントにゴールを重ねるストライカーがみんな知っている、いわばゴールを取るための秘訣です。違う形でゴールを取りまくっていた選手が、そこに行き着いたというのはとても興味深いです。

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岩政 大樹

いわまさ だいき

東京ユナイテッドFC

サッカー選手

1982年1月30日生まれ、35歳。187cm/85kg。ポジションはセンターバック。

山口県出身。周東FC、大島JSCを経て岩国高校サッカー部でプレー。東京学芸大学在学中に注目を集め、2004年鹿島アントラーズに加入。

2007年~2009年鹿島アントラーズのJリーグ3連覇に貢献。自身も3年連続Jリーグベストイレブンに選出される。

2013年鹿島アントラーズを退団。2014年にはタイプレミアリーグのテロサーサナでプレー、翌年ファジアーノ岡山に加入。

強さとクレバーさを兼ね備えたプレーでディフェンスラインのリーダーとして活躍する。2017年シーズンより関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドFCに加入(コーチ兼任)。東京大学サッカー部コーチも兼任。

2016年シーズン終了現在で、J1通算290試合出場35得点、J2通算82試合で10得点。日本代表国際Aマッチ8試合出場。

2017年9月初の著書『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』を上梓。


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