分かっていても止められない。C・ロナウドの″ワンタッチシュート”
DF目線からストライカーの動きを読む
■ロナウドの秘訣と同じ形を知るJリーガー
Jリーグにもこの秘訣を身につけて、ゴールを量産している選手がいます。浦和レッズの興梠選手です。
僕は興梠選手が若い頃に鹿島で一緒にプレーしていましたが、当時はまだこの秘訣を身につけていませんでした。本人に確認はしていませんが、最近の試合を見ていると彼は確実にこのポジショニングとタイミングをモノにしたと思います。高卒で鹿島に入ってきたときはチャンスメーカーという感じだった彼が、今やJリーグの得点ランキングを独走しているのですから、僕にとっては少し驚きです。
実は、興梠選手は、鹿島時代から、三連覇を果たしたときの浦和レッズ戦でのゴールで思い出されるように、ワンタッチでのゴールが得意だったのです。しかし、その頃の彼はストライカーという感じではなく、マルキーニョス選手のパートナーとしてオールラウンダーという感じでした。エリア内をえぐるようなドリブルも武器にしていて、ペナルティーエリア内でチャンスを作る役割も果たしていました。今でもオールラウンダーという面は残していますが、ペナルティーエリア内での仕事が整理され、よりワンタッチでゴールをとるための動きを増やした印象です。
さらに、クリスティアーノ・ロナウド同様、そのためのポジショニングとタイミングを掴んだことで、相手に注意されていてもゴールを重ねることができています。
これからも興梠選手はゴールを重ねていくでしょう。
思い出すのは興梠選手と大迫選手が2トップを組んでいた2011年のことです。彼らはその頃から素晴らしい才能を見せていました。二人のコンビネーションも素晴らしく、当時僕が日本代表にいくと他の代表ディフェンダーたちがよくニ人のことを絶賛していました。
しかし、当時のニ人は得点数が伸びませんでした。確か、興梠選手が4得点、大迫選手が5得点だったでしょうか。二人ともペナルティーエリアに入ってからのプレーや動きが整理できずに苦しんでいました。
その後、大迫選手はワンタッチゴールを増やし日本代表、そしてドイツへと飛躍し、興梠選手も点取り屋に姿を変え、ゴールを量産しています。
今のニ人の活躍を、僕は本当に嬉しく思うとともに、少し想像してみることがあります。
あの頃のままニ人が2トップを組み、今のようにワンタッチゴールの取り方を身につけたニ人だったらどんなコンビになったのだろうと。そして、僕はそれを30メートル後方でディフェンス陣を束ねながら眺めているのです。「あいつらすげーな」なんてつぶやきながら。<連載:岩政大樹の現役目線>