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第2波に備えて《新型コロナウイルス感染症対策》を「まるごと」おさらいします‼️【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義⑱】

命を守る講義⑱「新型コロナウイルスの真実」


 感染症から命を守るための原理原則は、変わらない。この原則を体に染み込ませる決定版。感染症専門医の第一人者・岩田健太郎神戸大学病院感染症教授の最新刊『新型コロナウイルスの真実』をもとに現在の感染者が急増する緊急事態に対し、私たちが「今、できる対策」を連続講義いただいた。「新型コロナウイルス感染症」から自分と家族、人々の命を守るために、今、私たちは何をすべきか。最終回は、新型コロナ感染症「今できる」対策をおさらいします。


■自分の対策を「正しく判断」する

岩田健太郎

 ここまで、感染症予防の基礎になる知識を解説してきました。このあたりで一度、個人ができる対策についてまとめておきましょう。

 とにかく一番大事なものは、手です。手指消毒を徹底することで、自分が感染するリスクを確実に減らすことができます。また、今の段階で日本で起こっている感染はほとんどがクラスターによるものです。クラスターをつくりやすい、狭く閉鎖された環境は、街を歩いていて感染するよりもずっとリスクが高いことを認識しておきましょう。どこでクラスターが発生したか、自分がそのクラスターに関わっているかを把握することも、とても大切です。

 それから、自分に風邪の症状が出たときはとにかく家にいること。コロナかコロナじゃないかは、さしあたり気にしなくてもいいんです。どんな風邪であっても手指消毒は大事だし、その風邪が新型コロナウイルスでなく、ライノウイルスでも、インフルエンザでも、従来のコロナウイルスでも、周りに撒き散らしたらダメに決まっています。風邪をひいたら自宅で休む。会社や学校には行かない。それが正しく判断することです。

 「コロナではない」ことは証明できないんですから、風邪の原因がコロナかどうかは気にしない。だからといって我慢をする必要はありません。しんどいときには病院へ行きましょう。ただし、医者の側も診察室でいきなり「コロナかも」と言われても困りますから、ちゃんと先に電話で「行きますよ」と連絡して、診てもらいましょう。

 いざ病院に行くときに咳とかくしゃみをしているなら、そのときこそマスクの出番です。飛沫を飛ばして他の人にうつさないよう、マスクを着けましょう。自分がコロナだと診断されたときには、もう病院のお医者さんの言うことを聞いて療養するだけです。

◼︎家族がコロナだと診断されたとき

 家族がコロナだと診断されたとき、家で世話をする場合に大事なのはやはり手指消毒。これが一番の基本です。

 患者さんの部屋の窓はできれば開けて換気をしましょう。患者さんは、家族にうつさないようにマスクを着けましょう。服に付いたウイルスを消毒するには熱湯に漬けましょう。ウイルスは部屋の外までは来ないので、そこを踏まえてお世話をしましょう。

 で、回復したら、そこでおしまい。8割の人が良くなっちゃうので、罹ったからといってあまり悲観的にならないでください。でも、しんどくなったら病院に行きましょう。自分で判断する能力と責任がまだない子供には、周りの大人が対応をすることになりますが、そのときも考え方は一緒です。

 外で遊ぶときには、症状がないかどうかを確認して、遊んだあとは周りの人たちがきちんと手指消毒をさせましょう。周りにうつさないかと心配されるかもしれませんが、これまで説明してきたとおり、基本的に無症状なら心配しなくていいです。子供に風邪の症状があるときには、様子を見ておきましょう。たとえ新型コロナウイルスに罹っていた場合でも、自然に治る可能性が高いです。
普段元気なときは何をしてもいい、症状が出たら人に会わない。このメリハリをつけることが大事です。

 周りに高齢者がいる場合にも 症状がないなら、ことさら気にする必要はありません。「症状がない」ということは、仮に自分がウイルスを持っていても飛び散ったりしないということです。咳やくしゃみ、大声でつばを撒き散らしたりしない限り、ウイルスは外に出ていきません。たとえ喉にウイルスがくっついていても、喉から直接他人に感染させることはできません。感染している人の喉に指を突っ込んで、その指をそのまま自分の口に入れたりしない限り、感染のリスクは低いんです。

 そもそも症状がないということは、自分が感染してるかしてないか分かっていないってことです。そこで「いや、症状がないだけで感染しているかも……」みたいに神経質になると、きりがなくなります。感染していてもしていなくても、とにかく咳やくしゃみがなければ飛沫感染はほとんど起きないし、ちゃんと手指消毒をやっておけば接触感染もない。 そうやって、正しく診断できていなくても、正しく判断はできるのです。

 「症状がない」ということは、感染させるリスクもほとんどないということです。もちろん知らない間に罹っているかもしれないから、リスクはゼロではない。けれども、ゼロリスクを求めるのは非現実的な要求です。

 新型コロナウイルスの感染を完全に回避する方法が、一つだけあります。それは家に引き籠こもることです。家から一歩も出ない。部屋から一歩も出ない。誰にも会わない。これを貫けば感染はしませんけど、こうなったら、もう一種の病気です。すごく不健康な状態だと思います。

 我々が求めるべきは「より低いリスク」であって、ゼロリスクではないのです。
(「新型コロナウイルスの真実」新講義へつづく)

 

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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