《失敗の本質》戦慄の形式主義——目的は感染を防ぐこと。PCRの同意書をとることではない【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義㉑】
命を守る講義㉑「新型コロナウイルスの真実」
■DPATは、そもそも入る必要がなかった
それでも検疫官には、船の中に入らなければいけない理由があるにはあります。船に入らないと、検査のためのサンプリングができないですからね。
一方、DPATの場合は、本来、船に入る必要性そのものがなかった。
DPAT(ディーパット)とはDisaster Psychiatric Assistance Team(災害派遣精神医療チーム)の略で、精神科の専門家です。彼らはダイヤモンド・プリンセスに入って、乗客・乗員の不安に対応していたわけですね。
たしかに、平常時であれば精神科の面接は対面で、一対一で行われて、薬を出したり、認知行動療法をしたりするわけですけど、今は非常時で、ウイルス感染をできるだけ拡げないことが大事な場面です。
だったら対面にこだわらずに、精神科の面接なんて全部スマホでやればいい。電話でもいいし、スカイプみたいなビデオ通話でもいい。そもそもダイヤモンド・プリンセスに精神科医が入る必要なんてなかったんです。
でもDPATの人は一部の乗客に対しては物理的にレッドゾーンに入ることを強いられていました。PPEを着て診察に行って、結果、DPATからウイルスの感染者が出てしまいました。
DPATから感染者が出るなんてことはそもそも論外で、先述のとおり、本来スキームがしっかりしていれば起こりえなかったことなんです。
(「新型コロナウイルスの真実㉒ 」へつづく)
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